電子メールクライアント:メールの送受信と管理を担うソフトウェア
電子メールクライアントは、
電子メールの送受信と管理を主な機能とする
アプリケーションソフトウェアです。一般的には「メールソフト」や「メーラー」と呼ばれ、私たちのデジタルコミュニケーションにおいて欠かせないツールとなっています。ただし、「メーラー」という用語は、メール転送エージェント(MTA)を指す場合もあるため、文脈によっては注意が必要です。
電子メールクライアントは、メールサーバ上のメール転送エージェントと連携して動作します。メールの送信にはSMTP(
Simple Mail Transfer Protocol)、受信にはPOP3(Post Office Protocol version 3)やIMAP(Internet Message Access Protocol)といった
通信プロトコルが用いられます。これらのプロトコルを通じて、ユーザーはメールサーバと安全にデータのやり取りを行うことができます。
電子メールクライアントの主要機能
電子メールクライアントの基本機能は、メールの作成、送信、受信、そして受信したメールの管理と閲覧です。多くのソフトウェアではこれらの機能が統合されていますが、場合によってはテキストエディタやウェブブラウザといった外部アプリケーションとの連携も可能です。また、単機能のソフトウェアを組み合わせて利用することもあります。
メールクライアントは、受信サーバと送信サーバのホスト名(FQDN)、
アカウント情報(メールアドレス、
ログインID、
パスワード)、使用する
通信プロトコルなどを事前に設定する必要があります。これにより、メールの送受信がスムーズに行えます。
さらに、多くの現代的な
電子メールクライアントは、メール機能以外にも様々な機能を統合しています。例えば、ニュースリーダ機能(ネットニュースの閲覧・投稿)、
フィードリーダー機能(
RSSなどの購読)、スケジュール管理機能などが搭載されているものもあります。これにより、複数の作業を一つのアプリケーションで効率的に行うことが可能です。
メール受信方式:プッシュ型とプル型
受信メールサーバから
電子メールクライアントへのメール転送方式には、大きく分けてプッシュ型とプル型があります。
プッシュ型(プッシュメール): 受信メールサーバが能動的に電子メールクライアントへメールを即時に転送する方式です。常にネットワークに接続されている携帯電話などでは、この方式が有効です。日本では、iモードメールなどで古くから利用されています。
プル型:
電子メールクライアントが受信メールサーバに定期的に接続し、新しいメールがあるかどうかを確認する方式です。ネットワーク接続が常時ではない場合や、IPアドレスが頻繁に変更される環境では、プッシュ型は適さないため、この方式が用いられます。例えば、
Wi-Fi接続のノートパソコンなどは、DHCPによって動的にIPアドレスが割り当てられるため、プル型が適切です。
POP3とIMAPは、普及しているメール受信プロトコルです。POP3は受信メールをローカルにダウンロードしてサーバから削除するのに対し、IMAPはサーバ上にメールを保存したままクライアントで管理・表示します。
メール送信と表示
作成したメールはSMTPプロトコルを使ってメール転送エージェントに送信されます。メールの表示においては、ヘッダに指定されたエンコーディングに従って本文が表示され、添付ファイルも適切に処理されます。また、返信メールの引用部分の表示色を変更する機能や、MIMEエンコーディングされたバイナリデータの復号化機能なども備えています。
複数メールの管理と閲覧
メールの保存形式には、mboxやemlなどがあります。多くの
電子メールクライアントは、異なる形式間のインポート・エクスポート機能を備え、メールデータの移行を容易にしています。
受信メールの一覧表示では、ソート機能、複数のローカルメールボックスの作成、表示色の変更、フラグによる分類、スレッド表示、スパムフィルタリングなどが利用可能です。これらの機能により、大量のメールを効率的に管理・閲覧できます。
メール作成機能
メール作成時には、SMTP規格に準拠したフォーマットで作成する必要があります。一般的に、メール本文は7
ビット文字のみを用いた
テキストファイルとして作成されますが、バイナリファイルを添付する際には、
電子メールクライアントによって符号化が行われます。送信先(To、Cc、Bcc)、件名(Subject)などのヘッダ情報も
電子メールクライアントによって付加されます。さらに、返信メールへの引用記号の自動付加、アドレスリスト、
署名、テンプレート機能なども多くのクライアントに搭載されています。