Adobe Touch Apps

Adobe Touch Apps：タブレット黎明期を彩ったAdobeの挑戦

Adobe Touch Appsは、2011年にAdobe Creative Cloudの一部として登場した、タブレットデバイス向けのアプリケーション群です。当時、iPadの登場をきっかけにAndroidタブレットも続々とリリースされ、モバイルデバイスでのクリエイティブな活動への関心が高まっていました。Adobeは、この流れを受け、「クリエイティブを再定義する」というビジョンのもと、タッチ操作に最適化されたアプリケーション群を開発しました。

概要

2011年10月4日、Adobe MAX 2011にて発表されたAdobe Touch Appsは、タブレットデバイスの可能性を追求する意欲的な試みでした。しかし、その多くは2015年に開発が打ち切られ、市場から姿を消しました。ただし、一部のアプリは名前を変えるなどして開発が継続され、その後のiPad版PhotoshopやIllustratorの登場へとつながりました。

数年の雌伏期間を経て、2018年にはiPad版Photoshopの開発が発表され、2019年11月4日に正式リリースされました。さらに2020年にはiPad版Illustratorもリリースされ、デスクトップ版と同じ名称、ファイル互換性を保ったアプリとして、クリエイターに新たな可能性を提供しています。

製品ファミリー

Adobe Touch Appsには、以下のような製品ファミリーが含まれていました。

Adobe Photoshop Touch: タブレット向けにカスタム開発されたPhotoshopです。当初はAndroid版のみがリリースされ、価格は9.99ドル（日本円で850円）でした。その後、iPad版やスマートフォン版もリリースされましたが、2015年5月28日に販売終了しています。

Adobe Collage: 写真や画像をコラージュするためのアイデア・スケッチツールです。図やテキスト、Creative Suiteのファイルをイメージボードに統合でき、外出先でのラフスケッチ作成に役立ちました。

Adobe Debut: プレゼンテーション用ツールとして、デザイナーや営業職がクライアントに成果物を共有するために利用されていました。

Adobe Ideas: ベクトルベースの描画ツールで、レイヤーに対応しています。Illustratorのタブレット版のような位置づけで、後にAdobe Illustrator Drawと名前を変えて開発が継続されました。

Adobe Kuler: カラーテーマの作成、編集、共有が可能なアプリです。iPhone版も登場し、後にCreative Cloudにも搭載されました。現在ではAdobe Colorとして知られています。

Adobe Proto: Webサイトやモバイルアプリケーション向けのワイヤーフレームとプロトタイプを設計するためのアプリケーションです。

タブレット黎明期を象徴する存在

Adobe Touch Appsは、タブレット黎明期におけるAdobeの挑戦を象徴する製品群と言えるでしょう。多くのアプリは短命に終わりましたが、その開発で培われた技術やノウハウは、その後のiPad版PhotoshopやIllustratorといった、より高度なタブレット向けアプリの開発につながりました。タッチ操作に最適化されたインターフェースや、場所を選ばずにクリエイティブな活動ができるというコンセプトは、現在のモバイルクリエイティブの基礎を築いたと言えるでしょう。

関連情報

Adobe Edge Tools & Services
Adobe Edge Animate
Adobe Muse

外部リンク

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