AIKI

AIKI (あいき)

2002年公開の日本映画『AIKI』は、不慮の事故で下半身不随となった青年が、合気柔術を通して生きる希望を見出していく姿を描いた作品です。主人公の葛藤と成長、周囲の人々との温かい交流が、観る者の心を揺さぶります。

あらすじ

ボクシングに打ち込んでいた芦原太一は、新人戦で勝利した矢先、バイク事故に遭い下半身麻痺となります。絶望に暮れ、周囲を拒絶する日々を送る太一でしたが、ある夜、チンピラに絡まれた女性を助けようとして返り討ちに遭ったことから、テキ屋の親分である権水や巫女のサマ子と出会い、再び生きる希望を見出していきます。

そんな中、神社の境内で奉納演武として行われていた合気柔術を目にした太一は、その武術に魅了され、師範の平石に入門を決意します。しかし、車椅子での稽古は困難を極め、太一は自身の身体と向き合いながら、新たな道を切り開いていこうとします。

キャスト

芦原太一：加藤晴彦
バイク事故で下半身不随となった青年。自暴自棄になるが、合気柔術と出会い再生していく。
サマ子：ともさかりえ
巫女のアルバイトをする女性。実はギャンブラー。
平石正嗣：石橋凌
大東流合気柔術の師範。会社員。
芦原民子：原千晶
太一の姉。献身的に太一を支える。
チカ：木内晶子
太一の元恋人。事故で怪我を負う。
権水松太郎：桑名正博
テキ屋の親分。太一を何かと助ける。
『秘め事』のママ：余貴美子
権水の行きつけの店の経営者。太一に仕事を紹介する。

映画の特徴

障害のリアルな描写:
本作は、脊髄損傷による障害を非常に正確に描写しています。車椅子の操作訓練や、排泄の問題、性に関する問題など、これまであまり語られることのなかったテーマにも踏み込んでおり、脊髄損傷者の生活をリアルに伝えています。

実在の人物をモデル:
主人公のモデルは、車椅子に乗ったまま大東流合気柔術を修行するデンマーク在住の武術家、オーレ・キングストン・イェンセン氏です。また、師範のモデルは、オーレ氏が所属する六方会の宗師、岡本正剛氏です。

様々な武道団体が登場:
クライマックスの奉納演武のシーンでは、森重流砲術、戸山流、宝蔵院流高田派、柳生心眼流など、様々な武道団体が登場し、迫力のある演武を披露しています。

映画が描くテーマ

『AIKI』は、障害を負った主人公が、絶望から立ち上がり、新たな目標を見つけて成長していく姿を描いています。また、周囲の人々との温かい交流を通して、生きる希望や勇気を与えてくれる作品です。主人公の葛藤や苦悩、そして希望に満ちた未来への歩みが、観る者の心を強く揺さぶります。

この映画は、単なる武道映画ではなく、人間の再生と希望を描いた感動的なドラマです。障害を持つ人もそうでない人も、それぞれの立場で何かを感じ、考えさせられる作品となっています。

エピソード

劇中では、太一が師範の弟子に「なぜ道場に先生がいないんだ？」と質問した際、「うちの先生はサラリーマンですから」という回答が出るシーンがあります。
エンドロールでは、オーレ・キングストン・イェンセン本人が車椅子に乗ったまま大東流の演武を披露しています。

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