戸山流

戸山流居合道について

戸山流は、日本陸軍の戸山学校で制定された軍刀操法にルーツを持つ居合道の一派です。大正時代から昭和初期にかけて誕生し、戦後には広く一般に普及しました。この流派の特徴や歴史、技法について詳しく見ていきましょう。

歴史的背景

戸山流の成立は1894年（明治27年）にまで遡ります。大日本帝国陸軍の歩兵教育を担った戸山学校では、初めて片手軍刀術が制定され、その後1915年（大正4年）には両手軍刀術が加わりました。当時は軍人たちが軍刀を使うことは一般的でしたが、実際に効果的に扱える人は少数でした。中山博道はその状況を振り返り、軍人たちが軍刀を扱うことの難しさを述懐しています。この背景から、基礎的な操法を短期間で習得可能な形へと整備が進められました。

技法の発展

1925年（大正14年）、戸山学校の剣術科長であった森永清中佐は、中山博道によって考案された居合の5本の形を採用しました。これらはすべて立技で構成され、古流居合のような座位の技は含まれていません。この時点では戸山学校内でのみの研究にとどまっていましたが、1940年（昭和15年）には持田盛二と斎村五郎の協力により、技法の改正と追加が実施されました。そして同年11月、陸軍将校の団体である偕行社からその技法が全将校に向けて配布され、広く軍内に浸透しました。1942年（昭和17年）には走りながらの斬撃技が追加され、戦闘における実用性も強調されました。

戦後の変革

太平洋戦争後、占領軍によって武道は一時禁止されましたが、1952年に再解禁されました。これを機に、戦前に構築された軍刀操法は「戸山流」として居合道としての名称が付けられ、広く一般に普及しました。戦前は軍服での練習が主でしたが、戦後は道着や袴に変わり、刀の持ち方や技法も居合の伝統に合わせられました。戸山流は特に試し斬りを重視している点が際立っています。

流派の構成

戸山流の流祖については、特定の個人がいるわけではなく、その流派は大正から昭和の約20年間で、多くの関係者によって発展してきました。流派ごとに教本の内容が異なることがあり、改定を加えた団体も存在します。主な団体としては戸山流居合道会や戸山流居合道連盟など、多数の支部が全国各地に展開しています。

訓練内容

戸山流の訓練プログラムは主に三つの内容で構成されています。まず、剣術の基礎を習得し、次に刀の操法を習います。最後に実際に対象を切る試斬を行います。これらは短期間で基礎を身につけることが可能であり、特に未経験者にとっては一撃必殺の力を養成するのに役立ちます。戦闘準備の際に必要な教育ですが、普段の訓練プログラムにも応用が大いに可能です。

戸山流は日本の武道において、独自の歴史や技術を有した流派であり、今も多くの人々に親しまれています。

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