Apple I

Apple I：Appleの原点にして希少なコレクターズアイテム

Apple I（アップル・ワン）は、Apple社が最初に製造・販売したマイクロコンピュータです。基板には「Apple Computer 1」と刻印されています。

概要

設計者はスティーブ・ウォズニアック。彼は幼少の頃からエレクトロニクスに精通しており、デジタル回路の知識も豊富でした。そのウォズニアックにコンピュータのビジネスを持ちかけたのが、友人であるスティーブ・ジョブズでした。ウォズニアックはビジネスには興味がありませんでしたが、新しいコンピュータを創造することに魅力を感じ、ジョブズの誘いに乗りました。

Apple Iを発売した当時、Apple Computer社は設立されたばかりの小さな会社でした。ウォズニアックが回路設計を担当し、自身ではんだ付けも行いました。しかし、基板の製造代金を支払う資金が不足していたため、ジョブズはフォルクスワーゲンのバンを、ウォズニアックは高機能電卓HP-65を売却し、資金を工面しました。

1976年7月、Apple Iはカリフォルニア州のホームブリュー・コンピュータ・クラブで発表されました。

発売とその後

1976年7月、Apple Iは666ドル66セントで発売されました。この価格設定は、ウォズニアックが「数字の繰り返し」を好んだことと、地元の店に500ドルで販売した価格から3分の1上乗せしたことが理由です。約200台が生産され、うち約170台が売れました。当時、他のホビイスト向けコンピュータは組み立てキットとして販売されていましたが、Apple Iは60個以上のチップが実装済みの回路基板として販売されました。ただし、筐体やキーボード、トランスは自分で用意する必要がありました。カセットテープインターフェースは別売りで提供されました。

Apple Iの最大の特徴は、内蔵の端末回路でした。キーボードと安価なテレビ受像機を接続するだけで使用できたため、競合製品と比較して革新的でした。BASICもテープで提供されました。1977年4月には475ドルに値下げされ、同年8月まで販売されました。Appleの製品リストからApple Iが消えたのは1977年10月のことで、正式に販売終了となりました。

Apple Iの設計・開発はウォズニアックが単独で行ったため、技術的な詳細を理解しているのは彼だけでした。Appleは、Apple IIの発売後、Apple Iのオーナーに対してApple IIの割引サービスや下取りを提供し、Apple IからApple IIへの乗り換えを促しました。そして、回収したApple Iは全て裁断して廃棄しました。そのため、現存するApple Iは非常に希少です。後継機は大ヒットとなったApple IIです。

コレクターズアイテムとしてのApple I

2017年の時点で、現存するApple Iは約50-60台、そのうち動作するものはわずか8台と言われています。オークションでは高額で取引されており、未組立状態のものが高値で鑑定されたり、オリジナルの箱やジョブズの手紙が付属しているものが高額で落札されたりしています。また、リサイクルセンターに持ち込まれた廃棄家電の中に完動品のApple Iが紛れており、高額で売却された事例もあります。テスト版にあたる「Celebrationモデル」は、ウォズニアック自身が鑑定し、81万5000ドルで落札されました。

近年では、スティーブ・ジョブズの死の影響から価格が落ち着いたものの、依然として高額で取引されています。故障したApple Iを修復する人物も現れており、オリジナルに近い状態に修復されています。

エミュレータ、クローン、レプリカ

Apple Iのソフトウェア互換なレプリカであるReplica Iが2003年に発売されました。他にもレプリカや自作用キットが出回っています。

Apple Iは、Appleの歴史における原点であると同時に、希少なコレクターズアイテムとして、その価値を高め続けています。

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