Apple IIc

Apple IIc (アップル・ツーシー)とは

Apple IIcは、1984年にAppleが発売したApple IIシリーズのコンパクトモデルです。1977年に登場し、人気を博したApple IIの設計思想を受け継ぎつつ、より洗練されたデザインと携帯性を追求した機種として登場しました。

概要

Apple IIは、その拡張性の高さと使いやすさから多くのユーザーに支持され、数々のアップデートを経てApple II Plus、Apple IIeへと進化しました。Apple IIcは、従来のApple IIシリーズとは異なり、拡張性を廃し、コンパクトでスタイリッシュなデザインを採用しました。白いスリムなキーボード一体型ケースは、それまでのApple IIのイメージを一新するものでした。

Apple IIeは、Apple IIcの登場後もアップデートを重ねながら1993年まで生産が続けられました。Apple IIcは、Apple IIシリーズのバリエーションの一つであり、IIeの後継機種ではありませんでした。1986年にはApple II GSが登場し、その後もApple IIc+の生産が1990年まで続けられたため、1986年から1990年までの間は、Apple IIシリーズとして3機種が併売される状況となりました。

特徴

Apple IIcの最大の特徴は、その薄型でスタイリッシュなデザインです。「ポータブルなコンピュータ」というコンセプトを打ち出し、5インチフロッピーディスクドライブ（後のApple IIc Plusでは3.5インチに変更）を内蔵し、持ち運び用のハンドルが取り付けられました。本体重量は約3キロ強と、当時のマシンとしては十分に可搬性がありました。

オプションとしてモノクロ表示の小型液晶ディスプレイも用意され、SF映画『2010年』には、主人公が海辺で液晶ディスプレイ付きのApple IIcを使用するシーンが登場しました。ただし、Apple IIc自体はバッテリーを内蔵しておらず、AC電源が必要でした。

フロッグデザインが手がけた未来的な白いケースと、スタイリッシュなCRTモニタは、デザインに敏感なユーザーを魅了しました。フロッグデザインは、Apple IIcのデザインをきっかけに、Macintoshシリーズのデザインも担当するようになります。Apple IIcのキーボードに採用されたフラットなデザインのキートップは、後のApple II GSやMacintosh IIシリーズの外付けキーボードのデザインの原型となりました。

Apple IIcは、スティーブ・ジョブズが主導したプロジェクトであり、拡張性よりもオールインワンでの使いやすさを追求しました。「コンパクトなボディに必要な機能を納め、原則としてエンドユーザーに中身を触らせない」という設計思想は、初代Macintoshと同じです。

しかし、拡張性を重視する従来のApple IIユーザーからは、Apple IIcは受け入れられず、販売は伸び悩みました。GUIを採用したMacintoshとは異なり、Apple IIシリーズの一機種として認知されたIIcは、従来のApple IIユーザーから見ると、利用目的が限られたものとして捉えられました。

Apple IIcの最終的な販売台数は公表されていませんが、Apple IIシリーズ全体の販売台数500万台のうち、IIcの占める割合はわずかであると言われています。

1988年9月には、Apple IIc Plusとしてアップデートされ、CPU速度とRAM容量が強化され、フロッピーディスクドライブが3.5インチに変更されました。電源が内蔵され、I/Oポートも変更されました。

Apple IIc Plusの生産は1990年まで続けられましたが、Apple IIシリーズの座はApple IIe Platinumに引き継がれました。

Apple IIcのデザインは、スティーブ・ジョブズが主導したものであり、「ホームエレクトロニクス製品であるコンピュータ」としての見た目にこだわったことが特筆されます。

主な仕様

Apple IIc

プロセッサ：65C02 1MHz
メインメモリ：128KB（最大1MB）
ディスクドライブ：140KBの5.25インチ フロッピーディスクドライブ搭載
電源アダプター

Apple IIc Plus

プロセッサ：改良型65C02 1MHz/4MHz
メインメモリ：128KB（最大1MB）
ディスクドライブ：800KB 3.5インチ フロッピーディスクドライブ搭載
内蔵電源

関連項目

Apple I
Apple II
Apple III
Macintosh
* スティーブ・ウォズニアック

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