Arch
Linuxは、シンプルさ、ミニマリズム、エレガンスを重視して開発されている
Linuxディストリビューションです。不要な機能や複雑さを避け、ユーザーがシステムを完全にコントロールできることを目指しています。
デザイン理念
Arch
Linuxは、開発者の視点から「シンプルさ」を追求しており、ユーザーインターフェースの親切さよりも、システムの効率性と透明性を重視しています。そのため、GUIツールよりもコマンドラインインターフェース(CLI)が中心であり、設定ファイルも直接編集することを前提としています。
ローリングリリースモデル
Arch
Linuxは、ローリングリリースモデルを採用しており、明確なバージョン番号やリリーススケジュールを持ちません。ソフトウェアパッケージは常に更新されており、定期的なアップデートを通じて、システムを常に最新の状態に保つことができます。インストール用イメージは定期的に更新されますが、これはシステムパッケージの最新スナップショットに過ぎません。
歴史
Arch
Linuxは、
2002年3月にジャッド・ヴィネットによって設立されました。彼は別のミニマリストディストリビューションであるCRUXに触発され、Arch
Linuxの開発を始めました。ジャッドは
2007年までプロジェクトを率いていましたが、その後アーロン・グリフィンに引き継がれました。
システムの構成
パッケージ管理
Arch
Linuxでは、Pacmanという独自のパッケージマネージャーを使用します。Pacmanは、パッケージのインストール、アップグレード、削除、ダウングレードを処理し、依存関係の自動解決を行います。公式パッケージはx86-64アーキテクチャ向けに最適化されており、基本的にtar.xz形式で配布されていますが、tar.zst形式への移行が進められています。
公式
リポジトリは以下の通りです。
core: 基本システムに必要なパッケージ
extra:
デスクトップ環境など、基本システム以外に必要なパッケージ
community: コミュニティによって作成されたパッケージ
multilib: 64ビット環境で
32ビットアプリケーションを実行するためのパッケージ
また、これらの
リポジトリに収録される前のテスト段階のパッケージを格納するtesting
リポジトリや、パッケージの破損を防ぐためのstaging
リポジトリも存在します。
セキュリティ
以前は、Arch
Linuxは電子署名付きパッケージをサポートしておらず、改ざんされたパッケージによるセキュリティリスクがありました。しかし、Pacmanバージョン4以降、パッケージとメタデータの検証が可能になり、公式
リポジトリのパッケージには署名が必須となりました。これにより、システムのセキュリティが大幅に向上しました。
Arch Build System (ABS)
ABSは、ソースコードからパッケージをビルドするためのシステムです。ABSのツールは公式
リポジトリのパッケージ作成にも使用されており、一般ユーザーも利用できます。パッケージのビルドに必要な情報はPKGBUILDという
Bashスクリプトで記述し、makepkgツールを使ってパッケージをビルドします。
Arch User Repository (AUR)
AURは、一般ユーザーが作成したPKGBUILDを収容する
リポジトリです。公式
リポジトリにないパッケージをビルドするためのPKGBUILDが提供されており、ユーザーはこれらのスクリプトを利用して、ソースコードからパッケージをビルドし、Pacmanでインストールできます。AURの利用は、公式
リポジトリにないソフトウェアを入手するための重要な手段となっています。
インストール
Arch
Linuxのインストールは、ISOイメージをCDやUSBに書き込み、コマンドライン環境で行います。パーティションの作成、ファイルシステムの作成とマウント、基本システムのインストールはすべて手動で行う必要があり、インストール直後のシステムは必要最小限のソフトウェアしか含まれていません。そのため、
デスクトップ環境やその他のソフトウェアは、ユーザーが手動でインストールする必要があります。
initシステム
Arch
Linuxは、2012年11月4日よりinitシステムとしてsystemdを採用しました。それ以前はBSDスタイルのinitが使用されていました。
派生ディストリビューション
Arch
Linuxをベースとした派生ディストリビューションも多数存在します。
Arch Linux ARM: ARMアーキテクチャで動作
Arch Hurd:
Linuxカーネルの代わりにGNU Hurdを使用
*
Antergos: GUIインストーラーでインストールを容易にしたディストリビューション(現在は開発終了)
まとめ
Arch
Linuxは、高度なカスタマイズ性と柔軟性を求めるユーザーに適した
Linuxディストリビューションです。シンプルで無駄のないシステムを自分で構築したいというユーザーには、最適な選択肢の一つとなるでしょう。