At the BLACK HOLE

at the BLACK HOLE

2004年2月11日、EMIミュージック・ジャパンよりリリースされた『at the BLACK HOLE』は、ミュージシャン吉井和哉が「YOSHII LOVINSON」名義で世に送り出した、記念すべき初のソロアルバムです。THE YELLOW MONKEY解散後、2003年から本格的にソロ活動を開始した彼にとって、自身の新たな音楽世界を示す出発点となる作品となりました。

このアルバムの特筆すべき点は、その制作スタイルにあります。ドラムスパートを除いて、ボーカルはもちろんのこと、ギター、ベース、キーボード、パーカッションなど、大半の楽器パートを吉井自身が一人で手掛けています。さらに、レコーディングの大部分が彼の自宅で行われたという、極めてプライベートかつセルフプロデュース色の強い作品となっています。この時期、彼は後の代表曲の一つである「ノーパン」の元となる歌詞のアイデアも形にしていたと言われています。

アルバムは全10曲で構成されており、シングルとしてリリースされた楽曲や、このアルバムで初めて発表された多彩な楽曲が収録されています。

収録曲

1. 20 GO
2. TALI
3. CALIFORNIAN RIDER
4. SADE JOPLIN
5. SIDE BY SIDE
6. FALLIN' FALLIN'
7. SPIRIT'S COMING (GET OUT I LOVE ROLLING STONES)
8. BLACK COCK'S HORSE
9. SWEET CANDY RAIN
10. AT THE BLACK HOLE

楽曲解説

収録曲の中から、いくつかの楽曲について紹介します。

20 GO: アルバムのオープニングを飾る楽曲で、ミュージックビデオも制作されました。PV監督は映像作家の大橋仁氏が手掛けています。なお、2ndシングル「SWEET CANDY RAIN」のカップリングに収録されている「70 GO」とは、タイトルは似ていますが全く異なる楽曲です。
TALI: YOSHII LOVINSON名義での1stシングルとして、アルバムに先行してリリースされました。PV監督は福士昌明氏が務めています。
SADE JOPLIN: 楽曲タイトルについて、吉井本人は「シャーデーとジャニス・ジョプリンという、異なる魅力を放つ二人の女性アーティストをイメージして生まれた楽曲だから」とその由来を語っています。
FALLIN' FALLIN': この楽曲は、リリースから長い年月を経た後もファンの間で印象深い一曲となっています。特に、2012年12月28日に日本武道館で行われた公演「YOSHII BEANS」で披露された際には、会場が予想外の盛り上がりを見せ、その光景に吉井自身も「こんなにも盛り上がる曲だとは知らなかった」と驚きを隠せなかったというエピソードが残っています。
SPIRIT'S COMING (GET OUT I LOVE ROLLING STONES): この楽曲は、2ndシングル「SWEET CANDY RAIN」のカップリング曲として既に発表されていました。
BLACK COCK'S HORSE: 後年行われたライブ「THANK YOU YOSHII KAZUYA」で演奏された際、原曲とは異なるテンポアレンジで披露されたことがファンの間で話題となりました。
SWEET CANDY RAIN: 本作からの2ndシングルとして発表されました。ミュージックビデオの監督は立花英久氏が担当しています。
AT THE BLACK HOLE: アルバムタイトルと同名のこの楽曲は、インストゥルメンタルです。一般的なメロディラインを持つ曲ではなく、断片的な電子音やノイズを組み合わせて構成されており、実験的なサウンドアプローチが特徴です。アルバム1曲目の「20 GO」のフレーズとの類似性も指摘されています。

参加ミュージシャン

YOSHII LOVINSON: ボーカル、ギター、ベース、パーカッション、キーボード
ジョシュ・フリーズ: ドラムス (M2, M3, M5-M9)
ドン・ヘフィングトン: パーカッション (M1, M2)
KEITA FURUHASHI: キーボード (M3)

『at the BLACK HOLE』は、THE YELLOW MONKEYというバンドの看板を下ろし、一人のアーティストとして歩み始めた吉井和哉の、剥き出しの音楽性と内面が色濃く反映された作品と言えるでしょう。その後のソロキャリアへと繋がる重要なマイルストーンとなっています。

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