Athlon X4

Athlon X4とは

AMDのAthlon X4は、2013年頃から2017年頃にかけて発売されたx86-64アーキテクチャのローエンドPC向けマイクロプロセッサです。Athlon X2の後継として、4つの物理コアを搭載し、前モデルよりもプロセスルールが縮小されました。これにより、回路面積が小さくなり、より多くのトランジスタを組み込めるようになりました。例えば、Athlon X4 750では13億個だったトランジスタ数が、860Kでは約24億個と、ほぼ2倍に増加しています。

マイクロアーキテクチャにはPiledriverが採用されており、前世代のBulldozerと比較して、クロックあたりの効率向上、消費電力の改善、演算スケジューリングの最適化が図られています。Athlon X4は、IntelのCeleronやPentiumシリーズへの対抗製品として登場し、低消費電力とそれに伴う低発熱が特徴です。また、一部モデルではオーバークロックも可能で、汎用性の高いCPUと言えるでしょう。Kaveriシリーズ以降では、PCIe 3.0やデュアルチャネルメモリに対応し、メモリの対応周波数も1866MHzから2400MHzへと拡大しました。

また、AMDのA-Seriesプロセッサ（APU）と比較して、内蔵グラフィック機能がない点が特徴です。Athlon X4を含むAthlonシリーズ全般は内蔵グラフィックを搭載していないため、グラフィック処理には別途グラフィックボードが必要です。

※Athlon X4の後継となるZenアーキテクチャ搭載のAthlon Proには、内蔵グラフィックを搭載するモデルも存在します。

各世代のAthlon X4

以下に、各世代のAthlon X4の製品一覧を示します。

Richland (2013)

リビジョン: RL-A1, TN-A1
マイクロアーキテクチャ: Piledriver
製造プロセスルール: 32nm
コア数/スレッド数: 4/4
L1キャッシュサイズ: 192KB
L2キャッシュサイズ: 2MB x 2
対応ソケット: FM2
内蔵GPU: なし
対応メモリ周波数: 1866MHz
TDP: 65W-100W
モデル名 / 動作周波数 (ターボ)
Athlon X4 750 / 3.10GHz～3.90GHz
Athlon X4 750K / 3.40GHz～4.0GHz
Athlon X4 760K / 3.80GHz～4.10GHz (TDP 100W)

Kaveri (2014)

PCIe 3.0正式サポート、DDR3デュアルチャネル対応、メモリ周波数拡大 (1866MHz→2133MHz)、プロセスルール縮小 (32nm→28nm)、FM2+ソケット対応
リビジョン: KV-A1
マイクロアーキテクチャ: Steamroller
製造プロセスルール: 28nm
コア数/スレッド数: 4/4
L1キャッシュサイズ: 256KB
L2キャッシュサイズ: 2MB x 2
対応ソケット: FM2+
内蔵GPU: なし
対応メモリ周波数: 2133MHz
TDP: 65W-95W
モデル名 / 動作周波数 (ターボ)
Athlon X4 830 / 3.0GHz～3.40GHz
Athlon X4 840 / 3.10GHz～3.80GHz
Athlon X4 860K / 3.70GHz～4.0GHz (TDP 95W)

Godavari (2015)

Kaveri世代からのセキュリティ強化
リビジョン: A1
マイクロアーキテクチャ: Steamroller
製造プロセスルール: 28nm
コア数/スレッド数: 4/4
L1キャッシュサイズ: 256KB
L2キャッシュサイズ: 2MB x 2
対応ソケット: FM2+
内蔵GPU: なし
対応メモリ周波数: 2133MHz
TDP: 95W
モデル名 / 動作周波数 (ターボ)
Athlon X4 870K / 3.90GHz～4.10GHz
Athlon X4 880K / 4.0GHz～4.20GHz

Carrizo (2016)

リビジョン: 不明
マイクロアーキテクチャ: Excavator
製造プロセスルール: 28nm
コア数/スレッド数: 4/4
L1キャッシュサイズ: 320KB
L2キャッシュサイズ: 2MB
対応ソケット: FM2+
内蔵GPU: なし
対応メモリ周波数: 2133MHz
TDP: 65W
モデル名 / 動作周波数 (ターボ)
Athlon X4 835 / 3.10GHz (ターボブーストなし)
Athlon X4 845 / 3.50GHz～3.80GHz

Bristol Ridge (2017)

PCIe 3.0正式サポート、DDR4対応、DDR4デュアルチャネル対応、メモリ周波数拡大 (2133MHz→2400MHz)、AM4ソケット対応
リビジョン: A1
マイクロアーキテクチャ: Excavator
製造プロセスルール: 28nm
コア数/スレッド数: 4/4
L1キャッシュサイズ: 256KB
L2キャッシュサイズ: 2MB
対応ソケット: AM4
内蔵GPU: なし
対応メモリ周波数: 2400MHz
TDP: 65W
モデル名 / 動作周波数 (ターボ)
Athlon X4 940 / 3.20GHz～3.60GHz
Athlon X4 950 / 3.50GHz～3.80GHz
Athlon X4 970 / 3.80GHz～4.0GHz

ソケットと互換性について

FM2+ソケットのマザーボードは、FM2ソケットのCPUとFM2+ソケットのCPUの両方に対応します。一方、FM2ソケットのマザーボードはFM2ソケットのCPUしか対応しません。これは、ソケットのピン数が異なるためです。例えば、FM2ソケットは904ピン、FM2+ソケットは906ピンです。したがって、FM2+ソケットのマザーボードに、同じ規格のCPUを取り付けたり、ピン数の少ないFM2のCPUを取り付けたりすることは可能ですが、FM2ソケットのマザーボードにピン数の多いFM2+ソケットのCPUを取り付けることはできません。

また、AM4ソケットは、AM3、FM2、FM2+のいずれのソケットとも互換性がありません。AM4ソケットのCPUを使用するには、別途AM4ソケット対応のマザーボードが必要です。ソケットに互換性があっても、BIOSがCPUを認識しない場合があります。使用するマザーボードのメーカーのCPU対応表を確認し、必要に応じてBIOSをアップデートする必要があります。

2コアプロセッサと表示される理由

Windowsのタスクマネージャーで、4コアのCPUが2コアと表示されることがあります。これは、CPUの設計上の問題によるものです。AMDのCPUでは、1つのコアが整数演算ユニット、もう1つのコアが浮動小数点演算ユニットとして設計されており、2つのコアを1つのモジュールとして扱います。OSがこれを誤認し、モジュール=コアと認識してしまうために、このような表示になることがあります。AMDが公表しているコア数に間違いはありません。

関連事項

APU
Ryzen
Athlon X2
* Phenom II

もう一度検索