Athlon

AMD Athlonシリーズ：x86プロセッサの進化の歴史

AMDが開発したx86アーキテクチャマイクロプロセッサ「Athlon」シリーズは、PC市場において重要な役割を果たしました。本稿では、Athlonシリーズの主要な世代、特徴、そして市場でのインパクトについて詳細に解説します。

Athlonシリーズの分類

Athlonシリーズは、大きく分けて初期型Athlon、機能強化されたAthlon XP、マルチプロセッサ対応のAthlon MP、そして廉価版のDuronという4つの主要なグループに分類できます。AMD-K5、K6シリーズとは異なり、AMD独自のチップセットとソケットを採用することで、Intel製品との互換性を排除しました。ただし、初期のSlot AコネクタはIntelのSC242と形状が似ており、流用されている点は特筆すべきです。

各世代のAthlonプロセッサ

1. 初期型Athlon (K7):

コードネーム：Argon
製造プロセス：0.25μm
ソケット：Slot A (Intel Slot 1と形状が類似)
特徴：Intel Pentium IIIに対抗する製品として登場。浮動小数点演算性能に強みを持ちました。2次キャッシュは512KBで、CPUコア外部に配置。FSBは200MHz。1GHz製品をいち早く市場に投入しました。発熱量が多く、オーバークロックには不向きでした。

2. Athlon K75 (Pluto/Orion):

製造プロセス：0.18μm
特徴：K7の後継。製造プロセスの改良により、より高クロックを実現しました。しかし、L2キャッシュのクロックがCPUコアクロックに追いついていない点が課題でした。1GHzを超える製品が登場し、AMD初の1GHz超えx86互換プロセッサとなりました。

3. Athlon Thunderbird:

特徴：K75をベースに、L2キャッシュをCPUコアに内蔵することで、キャッシュとコアのクロックを同期させ、性能向上を実現しました。新しいSocket Aパッケージを採用し、Slot A製品は少数生産となりました。FSBは200MHzと266MHzの製品がありました。高クロックモデルは高発熱で有名でした。

4. Athlon XP:

アーキテクチャ：QuantiSpeed
特徴：性能向上を謳ったAthlonの新たな名称。モデルナンバーによる性能指標を採用。Windows XPとの親和性を意識した命名でした。Palomino、Thoroughbred、Bartonといったコアが使用されました。

Palomino: プリフェッチ機能とSSE命令セットを追加。発熱を抑え、高い評価を受けました。
Thoroughbred: 0.13μmプロセスによる製造。オーバークロック耐性に優れ、人気を博しました。
Barton: ThoroughbredのL2キャッシュを512KBに増量。Athlon 64の開発遅延に対応するための製品でした。

Mustang: L2キャッシュを増量した計画製品。発売には至りませんでした。

5. Athlon MP:

特徴：SMP(対称型マルチプロセッシング)対応版Athlon XP。Athlon XPとほぼ同仕様ですが、Smart MP機能を搭載しています。FSBは266MHz。

6. モバイルAthlon:

特徴：モバイル向けのAthlon。低電圧動作とPowerNow!電源管理技術を採用。Athlon 4、Athlon XP-Mなどの製品名で展開されました。

幻のAthlonシリーズ

Athlon Ultra、Athlon Professional、Athlon Selectといった製品計画がありましたが、実現には至りませんでした。これらの製品は、既存製品の上位版もしくは廉価版として位置付けられていたと推測されます。

その他

Duron：Athlonの廉価版。キャッシュ容量を削減することで低価格を実現しました。
Sempron：Duronの後継。
Athlon Neo：モバイル向けAthlonシリーズ。

まとめ

Athlonシリーズは、Intel Pentium IIIに対抗し、PC市場に大きな影響を与えました。価格性能比の高さ、そして様々なモデルバリエーションにより、自作PCユーザーから大手メーカーまで幅広い層に支持されました。その技術的進化と市場での成功は、現代のCPU技術発展に大きく貢献しました。 製造プロセスの進化、キャッシュ容量の増加、そして新しいアーキテクチャの導入など、各世代のAthlonプロセッサは着実に性能向上を実現し、PC市場を牽引しました。

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