A型肝炎

A型肝炎（Hepatitis A）

A型肝炎は、A型肝炎ウイルス（HAV）によって引き起こされる肝炎の一種であり、主に急性の症状が見られる感染症です。この病気は一般的に一過性であり、感染後には持続的な免疫が形成されます。感染すると、主要な症状は約1ヶ月から2ヶ月の間ウイルスが体内で排出され続けることです。WHOはA型肝炎の感染リスクを高・中・低の三つに分類しており、日本でも感染症法の4類感染症として位置付けられています。

疫学

A型肝炎の歴史は古く、ヒポクラテスが「流行性の黄疸」として記録したことでも知られています。A型肝炎ウイルスは世界中に分布しており、特に衛生状態が悪い地域で流行する傾向があります。先進国では上下水道の整備が進んでいるため発生が少ないですが、開発途上国では乳幼児を中心に感染が多いです。

1988年には中国・上海で大規模な流行が見られた例もあり、これは衛生環境が改善する過程で起こるものです。日本では春先に感染者数が増える傾向があり、その理由は未解明ですが、これには海外旅行者の影響もあります。

病原体

A型肝炎ウイルスは、ピコルナウイルス科のRNAウイルスに属します。直径約27nmの構造を持ち、抵抗性が高く、乾燥や高温でも生存しますが、高圧滅菌やUV照射により失活します。

感染源

主に経口感染によって広がります。感染は糞便を直接扱ったり、ウイルスに汚染された食品や飲料を摂取することで発生します。特にカキや生野菜、冷凍フルーツなどが感染源となりやすいです。また、男性同士の性行為での感染例も増加しています。

臨床所見

A型肝炎ウイルスは感染後、通常2週間から7週間の潜伏期間を経て症状が現れます。初期症状は風邪に似ており、高齢者では重症化するケースが見られます。回復には通常1ヶ月から2ヶ月が必要で、慢性的な肝炎への移行はほとんどありません。

診断

A型肝炎の診断は、血清中のIgM型HA抗体の測定によって行われますが、初期段階では約5%が陰性の結果が出ることがあります。腹部エコーや便検査も補助的に用いられます。

治療

特異的な治療法は存在せず、対症療法が基本となります。肝機能を保護するために安静を保つことが重要です。また、薬剤に関しては肝代謝型のものが禁忌とされています。

予防

A型肝炎の予防には手洗いや加熱調理が重要です。また、ワクチン接種も推奨されています。日本では1995年からA型肝炎ワクチンが使用され、16歳以上に接種されていますが、2013年からは16歳未満の子供も対象となりました。ワクチンは2～4週間の間隔で2回接種し、その後6ヶ月後に3回目の接種が推奨されます。

WHOの対応

WHOはA型肝炎に対して地域別の対応を行っています。高レベル感染地域では定期接種が推奨されておらず、中レベルではワクチン接種が実施されています。低レベル感染地域では感染者の防止がしやすく、特に旅行者に対するワクチン接種が重要視されています。

A型肝炎に対する十分な理解と予防対策を講じることで、感染の拡大を防ぐことが可能です。

もう一度検索