BAC TSR-2

BAC TSR-2

BAC TSR-2（British Aircraft Corporation TSR-2、略称TSR.2）は、1960年代にイギリスで開発された試作爆撃機です。高度な性能を持ちながらも、開発は中止となり量産には至りませんでした。この記事では、TSR-2の開発背景、設計、エンジン、初飛行の状況、中止に至った理由、そして現存機について詳しく解説します。

開発の背景

TSR-2の開発は、1956年にイギリス空軍（RAF）が提案した超音速侵攻偵察攻撃機計画OR.339から始まります。この計画では、全天候で運用できる能力や短距離離着陸（STOL）、核兵器の搭載が可能で、無給油で1,850 km以上の飛行ができる爆撃機の設計が求められました。この要件は非常に高く、当時の技術では難しいものでした。

開発に参加したのは英国の航空機メーカーであり、最終的にヴィッカーズ社とイングリッシュ・エレクトリックが共同で設計案を提出し、1957年に本格的な開発が始まりました。しかし、その後の政治情勢によって、長距離爆撃機や戦闘機の新規開発は厳しく制限され、多くのプロジェクトが中止されることとなります。

機体の設計

TSR-2の機体には、翼端に下反角を持つ主翼、独特な形状の全浮動式水平尾翼と垂直尾翼が特徴です。過酷な性能要求を満たすため、高度な地形追従レーダーや新素材（アルミ・リチウム合金など）を用いる必要があり、開発は難航しました。この結果、当初の予算を大きく超過することになりました。

エンジン

搭載されているエンジンはブリストル・エンジン製のオリンパス22R（Mk.320）で、2基のターボジェットエンジンを使用しています。オリンパス22Rは二軸式で、アフターバーナーを使用すると最大推力が13,985 kgfに達します。インテークは半円形で、ショックコーンを装備しており、エンジン性能を向上させる役割を果たしています。

初飛行と開発の中止

TSR-2は1964年9月27日に初飛行を行い、その後数ヶ月にわたり試験飛行を重ねました。性能は良好でしたが、開発費の超過を問題視する新たな政権が誕生し、1965年4月に開発は中止されることになりました。この決定は多くの議論を呼び、陰謀説が生まれるなど、詳細は依然として不透明です。

開発中止の結果、RAFは代替機としてF-111Kを希望しましたが、予算が通らずこれも取りやめとなり、結果的に艦上攻撃機ブラックバーン・バッカニアが代替機として導入されました。

現存機

現在、TSR-2はイギリス空軍博物館コスフォード館とダックスフォード帝国戦争博物館にそれぞれ1機ずつ保管されています。これにより、TSR-2の優れた設計と歴史的意義が後世に伝えられています。

要目

• - 全長：26.21 m
• - 全幅：11.32 m
• - 全高：7.13 m
• - 自重：20,300 kg
• - 全備重量：43,559 kg
• - エンジン：ブリストル・シドレー オリンパス B.O1.22R（Mk320） ターボジェット ×2
• - 推力（A/B ON）：13,600 kgf
• - 最高速度：マッハ2.1
• - 実用上昇限度：16,470 m
• - 航続距離：2,774 km
• - 武装：最大5,400 kgの核爆弾・通常爆弾
• - 乗員：2名

TSR-2は、その時代の最先端技術を結集した機体として、航空史に名を刻んでいます。

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