BADモード

アルバム『BADモード』の概要

宇多田ヒカルの最新アルバム『BADモード』は、彼女にとって約3年7か月ぶりのスタジオ作品であり、通算8枚目となります。2022年1月19日にデジタル配信がスタートし、英語と日本語が交じり合った歌詞で構成される彼女初の「バイリンガルアルバム」としても注目を集めました。アルバムのリリース後、ピッチフォークなどの海外メディアから高く評価され、2022年の年間ベストアルバムにも選出されています。

製作の背景

宇多田は2018年にデビュー20周年を迎えた際、7thアルバム『初恋』をリリースし、12年ぶりの国内ツアーも成功させました。その後、彼女は新作アルバムに向けての準備を進めており、2020年にはいくつかの新曲を発表し、2021年には「One Last Kiss」や「PINK BLOOD」といった楽曲をリリースしました。加えて、彼女はノンバイナリーであることを公表し、音楽活動に新たな視点を加えました。『BADモード』の制作は、特に周囲の人々との良好な関係を築く成長を意図した内容となっています。

コンセプトとテーマ

『BADモード』の主要テーマは自己愛、成長、受容、そしてセルフパートナーシップです。アルバムのタイトルにも込められた「BADモード」という言葉は、落ち込んでいる時期や状況を象徴しており、宇多田はこの状態を理解することで、周囲の人々のために何ができるかを考えたと語っています。彼女は、自分自身と向き合い、より良い人間関係を築くために必要なプロセスを楽曲に反映させました。また、異なるバックグラウンドを持つ友人たちとの交流がインスピレーションに繋がっていると説明しています。

制作過程

音楽制作において、宇多田は自分の「聖域」に没頭し、コラボレーションが難しいと感じてきました。しかし、過去のアルバム制作から得た経験が、徐々に彼女の視野を広げ、新しい挑戦へと導いてきました。特に『BADモード』では、エレクトリックなサウンドに回帰し、外部のプロデューサーと共作することで探求を続けています。このコラボレーションには、小袋成彬やA.G.クック、フローティング・ポインツが参加しており、彼らとの作品づくりを通して宇多田自身がどのように成長していったのかが見えてきます。

音楽的スタイル

『BADモード』は、宇多田がこれまで培ってきたR&Bの要素と、エレクトロニックなサウンドを融合させています。加えて、90年代から2000年代初頭のダンス・ポップの影響を色濃く受けており、アーバンなリズムや、ディスコミュージックの要素も組み込まれています。批評家たちは、彼女の新たな試みがこれまでのキャリアの中でも特異なリズム解釈を示していると評価しています。

楽曲の特色

アルバムには「BADモード」「君に夢中」「One Last Kiss」など多様な楽曲が収録されています。特に「気分じゃないの (Not In The Mood)」は、フローティング・ポインツとの共同制作で、トリップ・ホップ風のジャジーな要素を持っています。また、アルバムの中で最も長い「Somewhere Near Marseilles」は、アシッド・ハウスの影響を受けた作品で、宇多田と彼女の息子とのコラボレーションがフィーチャーされています。

評価と影響

『BADモード』は、その革新的なサウンドと深いテーマの両面において、高い評価をされています。ピッチフォークは本作に高得点を与え、ジャパン・タイムズはその完成度を絶賛しました。また、アルバムを通じて宇多田は、現代社会における人々との関わり方や自己愛の重要性を訴えており、新たな価値観を提示しています。2021年には、制作に関する特別展やラジオ番組も開催され、多くのファンがその魅力に触れる機会が提供されました。

このように『BADモード』は、音楽的な試みやテーマの深さにおいて、宇多田ヒカルのキャリアの新たなハイライトを創り出しています。

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