BBM (バンド)

BBM（ベイカー・ブルース・ムーア）

BBMは、1993年から1994年という短い期間ながら、ロック史にその名を刻む偉大なミュージシャンたちによって結成されたイングランドのスリーピース・ロックバンドです。メンバーは、ドラムスにジンジャー・ベイカー、ベースにジャック・ブルース、そしてギターにゲイリー・ムーア。この顔ぶれは、かつて伝説的なバンド、クリームで活動を共にしたベイカーとブルースに、ブルースロックギターの第一人者であるムーアが加わるという、まさに夢のような組み合わせでした。

結成の背景

ゲイリー・ムーアとジャック・ブルースの交流は、BBM結成よりも遡ります。1979年、ムーアはコージー・パウエルのアルバム『オーヴァー・ザ・トップ』の制作を通じてブルースと出会いました。さらに1982年には、ムーア自身のアルバム『コリドーズ・オブ・パワー』の制作にブルースを招き、「エンド・オブ・ザ・ワールド」で彼のヴォーカルをフィーチャーしています。長年の付き合いがあった二人は、1993年8月14日、ドイツのエスリンゲンで行われたブルースのコンサートに、ゲイリー・ハズバンド（ドラムス）を加えたトリオとして出演し、再び共演を果たしました。この共演が契機となり、ムーアは再びブルースに自身のソロ・アルバムへの参加を打診することになります。

事態が大きく動いたのは、同年11月、ケルンで開催されたブルースの50歳のバースデー・コンサートでした。この記念すべきライブには、ムーアを含め、ブルースと所縁のある多くの著名なミュージシャンが集結しました。そのゲストの中には、1960年代からクリームを含め、様々なバンドでブルースと共に活動してきた盟友、ジンジャー・ベイカーの姿もありました。ライブのステージでは、ムーア、ブルース、ベイカーの3人が揃い、往年のクリームの楽曲を披露。これが、BBMへと繋がる決定的な瞬間となりました。

唯一のアルバム『白昼夢』

当初、ゲイリー・ムーアは自身のソロ・アルバム制作のためにジャック・ブルースと、そして先にブルースのライブで共演したゲイリー・ハズバンドを招く計画でした。しかし、レコーディング開始が遅れたことで、ハズバンドはビリー・コブハムとのセッションに参加するためにプロジェクトを離脱します。するとブルースは、この機会にジンジャー・ベイカーをドラマーとして迎えることを提案し、自らベイカーに連絡を取ったのです。ベイカーの参加が決まり、レコーディングが開始されると、それはもはやムーアのソロ・アルバムではなく、3人による新たなバンドのプロジェクトへと発展していきました。

完成したアルバムは『白昼夢』（Around the Next Dream）と名付けられ、1994年5月にヴァージン・レコードから「BBM（ベイカー・ブルース・ムーア）」名義で発表されました。ロック界のレジェンドたちが集結したこのアルバムは大きな注目を集め、同年6月には全英チャートで最高9位を記録する成功を収めました。

短命な活動と終焉

アルバム発表を受けて、BBMは1994年5月から欧州ツアーを開始しました。ツアーは7月まで予定されていましたが、蓋を開けてみれば、このスーパーグループは長く続きませんでした。レコーディングやライブを共にする中で、メンバー間の「エゴや感情的な対立、過去からのわだかまり」が表面化し、関係は次第に悪化。結果的に、予定されていた公演のいくつかはキャンセルされる事態となりました。ツアーが終了すると、BBMはそのまま新たな活動を行うことなく自然消滅し、メンバーはそれぞれのソロ活動へと戻っていきました。短期間ではありましたが、この伝説的な顔合わせが残した唯一のアルバム『白昼夢』は、それぞれのキャリアの中でも特異な輝きを放っています。

メンバー

• - ジンジャー・ベイカー (Ginger Baker): ドラムス（2019年10月6日死去）
• - ジャック・ブルース (Jack Bruce): ボーカル、ベース、チェロ、キーボード（2014年10月25日死去）
• - ゲイリー・ムーア (Gary Moore): ボーカル、ギター（2011年2月6日死去）

ディスコグラフィ

• - アルバム

- 『白昼夢』 – Around the Next Dream （1994年）

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