BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)
TM NETWORK|TM_NETWORKが1988年3月5日に発表した通算13枚目のシングル「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」は、同年劇場公開されたアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌として特に知られています。このリリースでは、当時主流であったEP（7インチレコード）と、普及が進み始めていた8cmCDシングルの両形態が同時発売され、それぞれ異なるバージョンが収録されている点も特筆されます。
本楽曲の制作は、TM NETWORK|TM_NETWORKが全国ツアー「Kiss Japan TM NETWORK|TM_NETWORK Tour '87〜'88」の真っ只中に行われました。バンダイからの主題歌制作オファーを受けた小室哲哉は、単に楽曲を提供するだけでなく、映画監督である富野由悠季と徹底的に話し合うことから始めました。二人は「機動戦士ガンダムとは何か」という根源的なテーマについて1時間以上語り合い、作品の世界観やコンセプトの深い部分を共有。富野監督から直々に絵コンテや、自身の考えを反映させた仮の歌詞を見せられたことで、小室はそこから音楽的なインスピレーションを膨らませていきました。
楽曲の主要なメロディラインはわずか20分で完成したと小室は語っていますが、制作の過程では葛藤もありました。アムロ・レイとシャア・アズナブル、二人の主人公が抱える様々な感情を「光と影」のように対比させ、楽曲の中で明るさと暗さを共存させること、そして富野監督が大切にしていた「日本の浪花節」のような、聴く者の心を掴む感動的な高揚感を音楽でどう表現するか、さらには人類全体の夢や宇宙的な広がりといった壮大なテーマが、当初はぼんやりとして掴みきれない状態だったといいます。このような状況下で、小室はバックトラックの制作にこれまで以上に時間をかけ、特に音色には強いこだわりを見せました。
レコーディングでは、人間の演奏による生の弦楽器を全面的に採用する一方、シンセサイザーで打ち込んだ音色もその特性を最大限に引き出し、両者の境界線を探るように綿密なアレンジが行われました。時間をかけて音色を吟味し、生楽器とシンセサイザーの良い部分を巧みに混ぜ合わせることで、この楽曲独特の奥行きと広がりが生まれたのです。
しかし、制作当初は難航もしました。小室の音楽スタイルを詳しく知らなかった富野監督は、生の弦楽器の響きに大きなインパクトを感じていた反面、シンセサイザーの音色にはそれほど重要性を置いていなかったためです。デモテープからリズム、シンセサイザーのダビングといった各段階で富野監督の細かなチェックが入り、なかなか最終的なOKが出なかったといいます。小室は、映画の完成映像に寄り添うことを最優先に考え、自身のヴァイオリン経験や生音を活かしたクラシック音楽的なアプローチを取り入れることで応え続けました。その努力が実り、ミキシングが終了する頃には、富野監督も最終的な出来栄えに納得を示したとされています。
ジャケットイラストは、アニメーターの梅津泰臣が担当しました。小室哲哉は後年、この楽曲を振り返り、「TM NETWORK|TM_NETWORKの作品でありながら、『ガンダム』という全く異なるビジュアル世界と融合したことで、普段の楽曲よりも非常に重みを感じる仕上がりになった」と述べています。また、本来は映画のサウンドトラック全体を手掛けたかったという意向も明かし、「オープニングから劇伴、そしてエンディングまで一連の流れで音楽を手掛けないと見えにくいものがある」と感じていたため、この楽曲だけでも冒頭の第1音には特に気を使い、時間をかけて制作したことを語っています。楽曲のタイトル「BEYOND THE TIME」には、本作のリリース後に開催されるツアー「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX TM NETWORK|TM_NETWORK ARENA TOUR」と連動させ、「TM NETWORK|TM_NETWORKが次の新しいテーマへ進むための、一つの区切り、そしてステップ」という意味が込められました。
作詞を担当した小室みつ子は、映画制作の関係者から提供された「機動戦士ガンダム」関連のビデオ資料を熱心に鑑賞しながら歌詞のテーマを構築しました。歌詞には、「人間は罪深い存在であり、同じ過ちを繰り返してしまうこと」「人は結局、『自由や平和』といった大義名分よりも、『個人的に大切に思う誰か』を守るために戦う存在であること」「そして未来を切り開くのは、個々の意志に他ならない」といった、作品の根幹に関わるメッセージが込められています。小室みつ子自身、後年この歌詞について「ガンダムという作品に対する、自分なりの感想文のようなものだった」と述懐しています。ボーカルを務めた宇都宮隆に対しては、小室哲哉から通常よりもキーを下げ目に設定し、声色の雰囲気を変えて歌うようディレクションがあったとされています。
「BEYOND THE TIME」は、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が登場するゲーム作品、例えば『スーパーロボット大戦シリーズ』や『ガンダム無双シリーズ』などにおいて、しばしばBGMとして使用されています。また、2021年12月には、日本経済新聞社が推進する「日経宇宙プロジェクト」の一環として、宇宙ビジネスの応援を目的としたデータ搭載SDメモリーカードが国際宇宙ステーション（ISS）へ打ち上げられ、本楽曲のデータもその中に含まれていました。このSDカードはISSでの滞在を終え、翌年地球へ帰還しています。さらに、2025年にはテレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第11話の挿入歌として起用されることも決定しており、そのための新バージョンも制作・配信される予定です。
本楽曲は、関係者や後年の音楽関係者からも高い評価を受けています。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のプロデューサーであった内田健二は、「とても現代的なフィーリング」と「覚えやすい素敵な楽曲」に満足していると語っています。また、音楽プロデューサーのShinnosukeは、「小室みつ子さんの歌詞も含め、すべてが映像的」「派手さはないのにカッコイイ」と絶賛し、切ないギターのイントロから引き込まれ、緻密なシーケンスやストリングスに「宇宙を感じる」とコメント。特にベースラインを「神すぎます！」と評し、『Get Wild』と並んで、その後のアニメエンディングテーマの「ある種の雛形」になった可能性を指摘しています。
既述の通り、「BEYOND THE TIME」は収録媒体によって複数のバージョンが存在します。主な違いはアウトロの処理です。8cmCDシングル版では音が唐突に終わる「カットアウト」ですが、EPレコード版では音が徐々に小さくなる「フェードアウト」が採用されており、EP版の方が短い収録時間となっています。多くのベスト・アルバムにはEP版が収録されていますが、『TIME CAPSULE all the singles』やトリビュートアルバム『TM NETWORK|TM_NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』、小室哲哉のコンピレーション『TK BOX 〜TETSUYA KOMURO HIT HISTORY〜』、『TETSUYA KOMURO ARCHIVES"T"』など一部では8cmCDシングル版が採用されています。オリジナル・アルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』に収録された「EXPANDED VERSION」は、アルバムのミキサーであるスティーヴ・ナイによるリミックスで、こちらもフェードアウトですが、EP版とは終了のタイミングが微妙に異なり、収録時間はCD版より短くEP版より長いという中間的なバージョンです。2014年発売の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック 完全版』の初回生産限定盤に収録された「テーマVocal BEYOND THE TIME MOVIE ENDING EDIT」は、映画本編のエンディングで使用されたバージョンで、アウトロはカットアウト、収録時間は約3分台と最もコンパクトです。さらに、2025年にはテレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』での使用に合わせて、新たな『-2025 Version-』および『-2025 Short Edit-』が配信される予定です。
2019年12月4日には、クリアパープルのカラーヴァイナル仕様の7インチアナログレコードとして、完全生産限定盤で再リリースされました。このアナログ盤には、8cmCDシングル版の音源が収録されています。
「BEYOND THE TIME」は、TM NETWORK|TM_NETWORKの様々なアルバムやコンピレーションアルバムにも収録されています。代表的な収録アルバムとしては、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック』、『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』、『COLLOSSEUM II』（ライブ版）、『TIME CAPSULE all the singles』、『TM NETWORK|TM_NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999』などが挙げられます。ライブ音源は『LIVE HISTORIA T』や『LIVE HISTORIA M』、『How Do You Crash It?』などに収録されています。
また、本楽曲は多くのアーティストによってカバーされています。主なカバー例としては、中村千絵（2008年）、Starving Trancer feat.hideki（2009年）、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer（2016年）、LUNA SEA（『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』テレビシリーズ主題歌、2019年）、森口博子（2019年、『GUNDAM SONG COVERS』）、玉置成実（パチンコ主題歌、2023年）、澤野弘之 feat. SennaRin（トリビュートアルバム、2024年）、西川貴教（アルバム『SINGularity III -VOYAGE-』、2025年）などがあり、世代やジャンルを超えて愛され続けている楽曲であることがわかります。
本楽曲の制作は、TM NETWORK|TM_NETWORKが全国ツアー「Kiss Japan TM NETWORK|TM_NETWORK Tour '87〜'88」の真っ只中に行われました。バンダイからの主題歌制作オファーを受けた小室哲哉は、単に楽曲を提供するだけでなく、映画監督である富野由悠季と徹底的に話し合うことから始めました。二人は「機動戦士ガンダムとは何か」という根源的なテーマについて1時間以上語り合い、作品の世界観やコンセプトの深い部分を共有。富野監督から直々に絵コンテや、自身の考えを反映させた仮の歌詞を見せられたことで、小室はそこから音楽的なインスピレーションを膨らませていきました。
楽曲の主要なメロディラインはわずか20分で完成したと小室は語っていますが、制作の過程では葛藤もありました。アムロ・レイとシャア・アズナブル、二人の主人公が抱える様々な感情を「光と影」のように対比させ、楽曲の中で明るさと暗さを共存させること、そして富野監督が大切にしていた「日本の浪花節」のような、聴く者の心を掴む感動的な高揚感を音楽でどう表現するか、さらには人類全体の夢や宇宙的な広がりといった壮大なテーマが、当初はぼんやりとして掴みきれない状態だったといいます。このような状況下で、小室はバックトラックの制作にこれまで以上に時間をかけ、特に音色には強いこだわりを見せました。
レコーディングでは、人間の演奏による生の弦楽器を全面的に採用する一方、シンセサイザーで打ち込んだ音色もその特性を最大限に引き出し、両者の境界線を探るように綿密なアレンジが行われました。時間をかけて音色を吟味し、生楽器とシンセサイザーの良い部分を巧みに混ぜ合わせることで、この楽曲独特の奥行きと広がりが生まれたのです。
しかし、制作当初は難航もしました。小室の音楽スタイルを詳しく知らなかった富野監督は、生の弦楽器の響きに大きなインパクトを感じていた反面、シンセサイザーの音色にはそれほど重要性を置いていなかったためです。デモテープからリズム、シンセサイザーのダビングといった各段階で富野監督の細かなチェックが入り、なかなか最終的なOKが出なかったといいます。小室は、映画の完成映像に寄り添うことを最優先に考え、自身のヴァイオリン経験や生音を活かしたクラシック音楽的なアプローチを取り入れることで応え続けました。その努力が実り、ミキシングが終了する頃には、富野監督も最終的な出来栄えに納得を示したとされています。
ジャケットイラストは、アニメーターの梅津泰臣が担当しました。小室哲哉は後年、この楽曲を振り返り、「TM NETWORK|TM_NETWORKの作品でありながら、『ガンダム』という全く異なるビジュアル世界と融合したことで、普段の楽曲よりも非常に重みを感じる仕上がりになった」と述べています。また、本来は映画のサウンドトラック全体を手掛けたかったという意向も明かし、「オープニングから劇伴、そしてエンディングまで一連の流れで音楽を手掛けないと見えにくいものがある」と感じていたため、この楽曲だけでも冒頭の第1音には特に気を使い、時間をかけて制作したことを語っています。楽曲のタイトル「BEYOND THE TIME」には、本作のリリース後に開催されるツアー「KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX TM NETWORK|TM_NETWORK ARENA TOUR」と連動させ、「TM NETWORK|TM_NETWORKが次の新しいテーマへ進むための、一つの区切り、そしてステップ」という意味が込められました。
作詞を担当した小室みつ子は、映画制作の関係者から提供された「機動戦士ガンダム」関連のビデオ資料を熱心に鑑賞しながら歌詞のテーマを構築しました。歌詞には、「人間は罪深い存在であり、同じ過ちを繰り返してしまうこと」「人は結局、『自由や平和』といった大義名分よりも、『個人的に大切に思う誰か』を守るために戦う存在であること」「そして未来を切り開くのは、個々の意志に他ならない」といった、作品の根幹に関わるメッセージが込められています。小室みつ子自身、後年この歌詞について「ガンダムという作品に対する、自分なりの感想文のようなものだった」と述懐しています。ボーカルを務めた宇都宮隆に対しては、小室哲哉から通常よりもキーを下げ目に設定し、声色の雰囲気を変えて歌うようディレクションがあったとされています。
「BEYOND THE TIME」は、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が登場するゲーム作品、例えば『スーパーロボット大戦シリーズ』や『ガンダム無双シリーズ』などにおいて、しばしばBGMとして使用されています。また、2021年12月には、日本経済新聞社が推進する「日経宇宙プロジェクト」の一環として、宇宙ビジネスの応援を目的としたデータ搭載SDメモリーカードが国際宇宙ステーション（ISS）へ打ち上げられ、本楽曲のデータもその中に含まれていました。このSDカードはISSでの滞在を終え、翌年地球へ帰還しています。さらに、2025年にはテレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第11話の挿入歌として起用されることも決定しており、そのための新バージョンも制作・配信される予定です。
本楽曲は、関係者や後年の音楽関係者からも高い評価を受けています。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のプロデューサーであった内田健二は、「とても現代的なフィーリング」と「覚えやすい素敵な楽曲」に満足していると語っています。また、音楽プロデューサーのShinnosukeは、「小室みつ子さんの歌詞も含め、すべてが映像的」「派手さはないのにカッコイイ」と絶賛し、切ないギターのイントロから引き込まれ、緻密なシーケンスやストリングスに「宇宙を感じる」とコメント。特にベースラインを「神すぎます！」と評し、『Get Wild』と並んで、その後のアニメエンディングテーマの「ある種の雛形」になった可能性を指摘しています。
既述の通り、「BEYOND THE TIME」は収録媒体によって複数のバージョンが存在します。主な違いはアウトロの処理です。8cmCDシングル版では音が唐突に終わる「カットアウト」ですが、EPレコード版では音が徐々に小さくなる「フェードアウト」が採用されており、EP版の方が短い収録時間となっています。多くのベスト・アルバムにはEP版が収録されていますが、『TIME CAPSULE all the singles』やトリビュートアルバム『TM NETWORK|TM_NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』、小室哲哉のコンピレーション『TK BOX 〜TETSUYA KOMURO HIT HISTORY〜』、『TETSUYA KOMURO ARCHIVES"T"』など一部では8cmCDシングル版が採用されています。オリジナル・アルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』に収録された「EXPANDED VERSION」は、アルバムのミキサーであるスティーヴ・ナイによるリミックスで、こちらもフェードアウトですが、EP版とは終了のタイミングが微妙に異なり、収録時間はCD版より短くEP版より長いという中間的なバージョンです。2014年発売の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック 完全版』の初回生産限定盤に収録された「テーマVocal BEYOND THE TIME MOVIE ENDING EDIT」は、映画本編のエンディングで使用されたバージョンで、アウトロはカットアウト、収録時間は約3分台と最もコンパクトです。さらに、2025年にはテレビアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』での使用に合わせて、新たな『-2025 Version-』および『-2025 Short Edit-』が配信される予定です。
2019年12月4日には、クリアパープルのカラーヴァイナル仕様の7インチアナログレコードとして、完全生産限定盤で再リリースされました。このアナログ盤には、8cmCDシングル版の音源が収録されています。
「BEYOND THE TIME」は、TM NETWORK|TM_NETWORKの様々なアルバムやコンピレーションアルバムにも収録されています。代表的な収録アルバムとしては、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア オリジナル・サウンドトラック』、『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』、『COLLOSSEUM II』（ライブ版）、『TIME CAPSULE all the singles』、『TM NETWORK|TM_NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999』などが挙げられます。ライブ音源は『LIVE HISTORIA T』や『LIVE HISTORIA M』、『How Do You Crash It?』などに収録されています。
また、本楽曲は多くのアーティストによってカバーされています。主なカバー例としては、中村千絵（2008年）、Starving Trancer feat.hideki（2009年）、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer（2016年）、LUNA SEA（『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』テレビシリーズ主題歌、2019年）、森口博子（2019年、『GUNDAM SONG COVERS』）、玉置成実（パチンコ主題歌、2023年）、澤野弘之 feat. SennaRin（トリビュートアルバム、2024年）、西川貴教（アルバム『SINGularity III -VOYAGE-』、2025年）などがあり、世代やジャンルを超えて愛され続けている楽曲であることがわかります。
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