BMW・E3

BMW E3シリーズ：メルセデス・ベンツに対抗したBMWの挑戦

BMW E3シリーズは、1968年から1977年にかけてBMWによって製造された、大型高級サルーンです。このモデルは、それまでのBMWのラインナップとは一線を画す存在感を示し、高級車市場におけるBMWの地位を確固たるものとしました。

経営危機からの復活と高級車市場への進出

1960年代初頭、BMWは経営危機に見舞われました。その中で、同社は一時的に4気筒エンジン搭載の小型モデルに注力せざるを得ませんでした。しかし、これらのモデルが市場で高い評価を得たことで、BMWは再び高級車市場への進出を図ることを決断します。その結果生まれたのが、E3シリーズです。メルセデス・ベンツがその地位を確立していた高級車市場に、BMWは強力な挑戦者として立ち向かおうとしたのです。

直列6気筒エンジンの魅力：「シルキー・シックス」

E3シリーズの心臓部は、新設計の直列6気筒エンジンです。このエンジンは、その滑らかな吹き上がりと静粛性から「シルキー・シックス」の愛称で呼ばれ、高い評価を得ました。2500（2,494cc、150馬力）と2800（2,788cc、170馬力）という初期モデルから、よりパワフルな3.0S（2,985cc、180馬力）や3.0Si（2,985cc、燃料噴射式200馬力）が追加されました。さらに、ホイールベースを延長した「L」モデルや、トップモデルである3.3L（3,295cc、190馬力）もラインナップに加わりました。これらのモデルは、排気量が上のメルセデス・ベンツのモデルに匹敵する性能を誇り、アウトバーン上ではしばしばスピードを競い合ったと伝えられています。

スポーティなデザインと高い品質

E3シリーズは、優れたエンジン性能に加えて、高い品質とスポーティなデザインも魅力でした。メルセデス・ベンツよりも若々しく、よりダイナミックな印象を与えるスタイリングは、多くの顧客を惹きつけました。E3シリーズ、そしてそのクーペモデルであるE9シリーズは、絶対的な販売台数ではメルセデス・ベンツに及ばなかったものの、多くのドイツ車メーカーが成し遂げられなかった偉業、すなわちメルセデスの真の対抗馬としての地位を獲得したのです。

後継モデルへのバトンタッチと日本の市場

1977年、E3シリーズはBMW 7シリーズにその座を譲りました。7シリーズはE3シリーズよりも大型化され、メルセデス・ベンツSクラスと直接対決できるモデルへと進化しました。E3シリーズは、その役割を終え、BMWの歴史に大きな足跡を残しました。当時、日本の輸入元であったバルコム貿易を通じて、比較的多くのE3シリーズが日本に輸入され、日本の自動車ファンにもその魅力を伝えました。

まとめ

BMW E3シリーズは、経営危機からの復活、高級車市場への挑戦、そして「シルキー・シックス」エンジンという象徴的なパワートレインによって、BMWの歴史において重要な位置を占めるモデルです。スポーティなデザインと高い品質は、多くの顧客を魅了し、メルセデス・ベンツに対抗する存在として、BMWのブランドイメージを大きく向上させました。その存在は、今日のBMWの成功の礎を築いたと言えるでしょう。

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