BORDER LINE

『BORDER LINE』は、2003年に公開された李相日監督初の長編映画です。2000年のぴあフィルムフェスティバルでグランプリを含む4賞を受賞した李相日監督が、スカラシップ権を得て制作しました。第8回新藤兼人賞では金賞を受賞しています。

ストーリー

物語は、それぞれの苦悩を抱える人々が、北へ向かう中で交錯していく姿を描きます。

川崎でタクシー運転手として働く黒崎は、ある日、自転車に乗った高校生の松田と接触事故を起こします。松田は、父親を殺して北海道へ逃走中でした。一方、ヤクザの宮路は、組の金を使い込んだ弟分を追う身となります。家庭崩壊の危機に瀕する主婦の相川は、追い詰められた末に銀行強盗を計画します。

ラジオのニュースで松田が父親を殺害したことを知った黒崎は、松田を警戒しながらも、北へ向かうタクシーを走らせます。逃避行の道中、松田は宮路と出会い、一時的に行動を共にします。宮路は、自分の娘に会うように松田に赤いカイトを託します。一方、相川は、強盗事件を起こし、息子をいじめる生徒を脅迫しますが、事態は思わぬ方向へ向かいます。

それぞれの場所で、それぞれの苦しみを抱えながら生きていた彼らは、やがて函館で交錯します。援助交際をしている宮路の娘はるかは、港でカイトをあげている松田と出会い、2人は心を通わせます。黒崎は松田の母親を函館へ送り届け、息子との再会を果たさせます。それぞれの過去と向き合い、新たな一歩を踏み出すことができるのか。登場人物たちの心の葛藤と再生を描いた作品です。

キャスト

松田周史：沢木哲
黒崎大吾：村上淳
宮路大輔：光石研
上原はるか：前田綾花
相川美佐：麻生祐未
松田の母：都はるみ（特別出演）

製作

李相日監督は、大学卒業後に日本映画学校（現・日本映画大学）に進学。卒業制作作品『青〜chong〜』が、2000年のぴあフィルムフェスティバルでグランプリを含む4賞を受賞しました。フリーの助監督として活動後、実際に起きた事件をモチーフに、本作『BORDER LINE』で長編デビューを果たしました。

本作は、父親を殺して逃走する高校生、やる気のないタクシー運転手、組織に追われるヤクザ、子供のいじめや夫のリストラに悩む主婦など、様々な問題を抱える人々の姿を通して、現代社会における家族のあり方を問いかけます。東京を出発点に、東北を経て北海道・函館まで、日本各地でロケーション撮影が行われました。

李相日監督は、「自分の映画としてやりたいこと、考えていること、思いのすべてを注ぎ込んだ。非常に不器用で不格好な映画だなと思ったりしますけど、表現したいことの原点が詰まっていて、技術的に及ばない中で、思いの丈だけがはみ出ている。」と語っています。

受賞歴

* 2003年 第8回新藤兼人賞 金賞

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