BOSSグレートウォール

BOSSグレートウォール

BOSSグレートウォールは、2016年に観測によってその存在が明らかになった、宇宙でも有数の巨大な構造体です。これは銀河フィラメントと呼ばれる、銀河が網の目のように連なって形成された構造の一種であり、その規模は観測可能な宇宙の中でも特筆すべきものです。

発見とその名称

この壮大な宇宙構造は、スローン・デジタル・スカイサーベイ（SDSS）の一部として実施されたバリオン振動分光学的調査（Baryon Oscillation Spectroscopic Survey）によって発見されました。その発見年である2016年は、宇宙構造研究において重要な節目となりました。「BOSSグレートウォール」という名称は、この発見に用いられた調査計画の頭文字「BOSS」に由来しています。これは、宇宙初期のバリオン音響振動の痕跡を詳細に調べることを目的とした大規模なサーベイです。

驚異的な規模と特徴

BOSSグレートウォールの規模は、私たちが想像する宇宙のスケールをはるかに超えています。

広がり: その最も顕著な特徴の一つは、約10億光年にも及ぶ圧倒的な幅です。これは、光の速さで10億年かけて横断できる距離に匹敵します。
構成要素: この巨大な構造の内部には、830個を超える明るい銀河が確認されています。さらに、これらの明るい銀河の数と同等かそれ以上の暗黒銀河も含まれていると考えられています。
質量: その膨大な銀河の集まりから推定される質量は、私たちの太陽系が属する天の川銀河の実に1万倍にも達する可能性があるとされています。
密度: 宇宙全体の平均的な物質密度と比較して、BOSSグレートウォールはその内部で約5倍という非常に高い密度を持っています。これは、物質が特定の場所に極端に集中していることを示しています。
* 距離: 地球から見たBOSSグレートウォールまでの距離は、その赤方偏移の値（z=0.47）から計算され、約68億光年と推定されています。これは、光が地球に届くまでに68億年かかったことを意味し、私たちがBOSSグレートウォールを見ているのは、68億年前の姿であるということです。

宇宙論における意義と未解決の課題

BOSSグレートウォールのような巨大構造の発見は、宇宙の大規模構造の形成と進化に関する私たちの理解を深める上で極めて重要です。しかし、その存在は同時に新たな疑問も提起しています。

現在、この構造を単一のまとまった「グレートウォール」と呼ぶことが適切であるかどうかは、宇宙論研究者の間で議論の対象となっています。その巨大さゆえに、重力によって完全に結合した単一の構造体として振る舞っているのか、それとも単に視線方向や重力的な影響で偶然集まっている銀河の集まりに過ぎないのかは、さらなる観測と理論的研究が必要です。

また、宇宙は現在、加速膨張していることが知られています。この加速膨張が、BOSSグレートウォール内部の銀河間距離を広げ、最終的にその一体性を崩壊させるのか、あるいは構造内部の重力が宇宙膨張に抵抗してまとまりを維持するのかという点も、今後の研究課題として残されています。

BOSSグレートウォールは、宇宙に存在する構造の多様性と複雑さを示す好例であり、私たちの宇宙観をさらに広げる発見として、今後の研究の進展が期待されています。

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