BOYS&GIRLS (ARBのアルバム)

ARB 『BOYS&GIRLS』

ロックバンド、ARBが1981年3月21日にリスナーのもとに届けたサード・フル・アルバムが『BOYS&GIRLS』である。この作品は、彼らの黎明期から初期の円熟期へと向かう過程で制作され、バンドの歩みにおいて重要なマイルストーンの一つとして数えられる。当時の日本のロックシーンにおいて、硬派かつ骨太なサウンドとメッセージ性の強い歌詞で異彩を放っていたARBの真骨頂が、このアルバムには色濃く反映されている。

本作には、エネルギー溢れる全11曲が収められている。すべての楽曲において、バンド自身がアレンジを担当しており、各メンバーの演奏スタイルや音楽的な志向がストレートに表現されたサウンドプロダクションが聴きどころとなっている。個々のプレイヤーの個性が融合し、ARBならではの強靭なアンサンブルを形成している点が、この時期の作品の魅力と言えるだろう。

収録曲の多くは、バンドのフロントマンである石橋凌が作詞と作曲の両方を担っている。彼の描く世界観は、若者の葛藤、社会への反骨、あるいは日常の中にある悲哀や希望といった多岐にわたるテーマを内包しており、聴く者の感情を揺さぶる力を持っている。また、ギタリストの田中一郎も作曲面で中心的な役割を果たしており、彼のメロディセンスが石橋の言葉に新たな息吹を与えている楽曲も多数存在する。さらに、一部の楽曲では作詞家として柴山俊之を迎え入れており、外部の視点が加わることで、アルバム全体の音楽的な幅が広がっている点も特筆すべき特徴である。

このアルバムには、シングルとしても発表された「ダディーズ・シューズ」が収められている。「ダディーズ・シューズ」は、通算6枚目のシングルとしてリリースされた楽曲であり、本作のリリースに先行して、あるいは同時期にリスナーの間で広く親しまれていたナンバーだ。アルバムバージョンとして、よりバンドのサウンドに磨きがかかった形で収録されている。

以下に、本作に収録された楽曲の一覧を示す。クレジットを見ればわかるように、石橋凌と田中一郎のコンビネーションがアルバムの中核を成しつつ、石橋単独での作家性、そして柴山俊之という異色のコラボレーションも光る構成となっている。

BOYS & GIRLS (作詞・作曲: 石橋凌)
ダディーズ・シューズ (作詞・作曲: 石橋凌)
発 (ハッパ) 破 (作詞: 石橋凌　作曲: 田中一郎)
Believe in R&R (作詞: 石橋凌　作曲: 田中一郎)
Naked Body (作詞・作曲: 石橋凌)
赤いラブレター (作詞: 石橋凌　作曲: 田中一郎)
エデンで1・2 (作詞: 石橋凌　作曲: 田中一郎)
Mr.ダイナマイト (作詞: 柴山俊之　作曲: 田中一郎)
ウイスキー・マン (作詞: 石橋凌　作曲: 田中一郎)
悲しき3号線 (作詞・作曲: 石橋凌)
* Just a 16 (作詞・作曲: 石橋凌)

アルバムのタイトルチューンである「BOYS & GIRLS」を筆頭に、各楽曲が独自の輝きを放ちながらも、アルバム全体として統一された世界観を構築している。青春の衝動と切なさ、社会への反抗心、そしてどこかロマンチックな視点。それらが混ざり合い、聴く者に強い共感を呼び起こす。特に、石橋凌の感情豊かなボーカルは、それぞれの歌詞に込められたメッセージを力強く、あるいは繊細に歌い上げ、聴き手の心に深く響く。田中一郎のソリッドでテクニカルなギタープレイも、楽曲に厚みとダイナミズムを与えている。

『BOYS&GIRLS』は、単なるロックアルバムにとどまらず、当時の若者の心情や時代の空気感を映し出したドキュメントのような側面も持っている。リリースから長い年月を経た現在でも、その剥き出しの情熱と真摯なメッセージは色褪せることがなく、多くの音楽ファンに愛され続けているARBの重要作品の一つである。

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