BTTB

坂本龍一『BTTB』の詳細

坂本龍一によるアルバム『BTTB』は、彼の13作目のソロアルバムとして1998年11月26日にリリースされました。このアルバムは、初めて全曲が新たに書き下ろされたピアノ作品であり、坂本がワーナーミュージック・ジャパンに移籍し発表した最初の作品でもあります。

アルバムのタイトル「BTTB」は「Back To The Basic」の略であり、坂本が自身の音楽のルーツに立ち返る意義を込めたものです。このタイトルには他にも「2B」という案も考えられていました。坂本は、影響を受けた作曲家モーリス・ラヴェルやエリック・サティのエッセンスをこのアルバムに取り入れ、彼自身が非常に充実したクリエイティブプロセスを経たと述べています。

実際、アルバムは坂本が曲を書き始めてからわずか4週間で完成し、これもまた驚異的なスピードです。彼はこの短期間で、過去の作品『エスペラント』や『音楽図鑑』に匹敵する満足感を得たと回想し、日記にもその思いを記しています。特に、本作は翌年に開催されるオペラ「LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999」の準備に位置づけられています。

坂本はこのアルバムのインスピレーション源として、バッハの『マタイ受難曲』のコラールを挙げており、彼の音楽のルーツであるクラシック音楽に対する愛情を示しています。収録は東京オペラシティコンサートホール内にあるタケミツメモリアルで行われ、特に5種類のマイクを使ってホールの自然な残響を捉えるという手法が特徴的です。人工的なリバーブをほとんど使用しないことで、より深く感情に訴える音楽が生まれました。全14曲が収められた初回限定盤では、この独特の音響が高く評価されています。

アルバムのリリース形態にも注目すべき点があります。初回限定盤は1998年にリリースされ、CDと楽譜に加え、坂本によるMIDIデータを収録したフロッピーディスクが同封されていました。その後、通常盤が1999年に発売され、こちらには映画「Snake Eyes」のテーマ曲や「Tong Poo」といった新たな2曲が追加されています。さらに、2002年にはインターナショナル盤がリリースされ、初回限定盤にあたる3曲が除外されたかわりに、新たな楽曲が加えられました。

2018年には、発売20周年を記念したリマスター盤が登場し、全18曲が収録されています。

収録曲は全て坂本龍一の作曲によるもので、各曲に独自の背景やインスピレーションが存在します。例えば、「Opus」は坂本が渋滞中に思いついたというエピソードがあり、「Sonatine」はラヴェルの気持ちを意識しつつも、坂本自身の不意のミスタッチを取り入れています。「Choral No.1」と「Choral No.2」はオペラの練習のために作られ、彼の音楽性をさらに広げています。また、「Aqua」は娘の坂本美雨のために特別に作られた曲で、彼女の声にヒーリング的な要素を強く取り入れています。

最後に、坂本龍一の『BTTB』は、彼の音楽の原点を再訪し、ピアノを通じて新たな芸術表現を模索した重要な作品であり、今なお多くのリスナーに影響を与え続けています。

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