音楽図鑑

アルバム『音楽図鑑』

坂本龍一の4作目のオリジナルアルバム『音楽図鑑』（おんがくずかん、Illustrated Musical Encyclopedia）は、1984年10月24日にミディレコードからリリースされました。この作品は、彼がYMO（イエローマジックオーケストラ）を解散した後に発表したソロアルバムとして、独自の音楽的探求が色濃く反映されています。

創作プロセスとレコーディング

『音楽図鑑』は、坂本が事前に決めたコンセプトに基づかず、スタジオでの即興的な演奏を記録するという新たなアプローチで作成されました。彼はこの過程を「シュールレアリズム的な自動筆記」と表現し、未知の冒険を求めるかのような冒険心あふれる言葉を残しています。

レコーディングは1982年10月に始まり、1984年8月のCDマスタリング完了までに約1年8ヶ月をかけました。この間、他のアーティストのアルバムのプロデュースやYMOのツアーといった他のプロジェクトも同時に進行されていたため、レコーディングは何度も中断されました。特に、1984年4月以降に使用されたシンセサイザー「フェアライトCMI」は、このアルバムに大きな影響を与えました。坂本自身もその効果について「インスパイアされるところが随分あり」とその重要性を語りました。

参加アーティストとのコラボレーション

アルバム制作にあたり、坂本は多くのミュージシャンと共演しました。特に山下達郎の参加が目立ち、彼との即興的なやり取りが生まれました。お互いにスタジオで声を掛け合いながら、共演が実現したといいます。また、彼のジャケットデザインを担当した立花ハジメによる独特のアートワークも注目されており、アルバム全体の雰囲気を引き立てています。

トラックの一部

アルバムには「TIBETAN DANCE」や「PARADISE LOST」など、坂本の代表的な楽曲が収められています。「TIBETAN DANCE」は、チベットの少女のダンスをイメージしたもので、シンプルなメロディが特徴です。また、「PARADISE LOST」はジョン・ミルトンの『失楽園』を基にした美しい曲調を持つ作品です。

一方「SELF PORTRAIT」は、坂本自身の過去や内面を表現した楽曲で、興味深いアプローチが随所に見られます。これらの作品は、彼の音楽における多様性と深さを示しており、聴く者を引きつけます。

発売形態

『音楽図鑑』のリリースには多様なフォーマットがあり、初回限定版には12インチのボーナスシングルも含まれています。その後も高音質盤やカセットテープ、CD再発売など、様々な形式でファンのもとに届けられました。また、2015年には未発表曲やバージョン違いを収めた「音楽図鑑-2015 Edition-」もリリースされ、日々進化する坂本の音楽の質を証明しています。

受容と影響

アルバムは坂本龍一自身だけでなく、周囲のアーティストにも影響を与え続けました。たとえば、ロバート・パーマーは本作を愛聴し、高橋幸宏も熱心なファンであることを公言しています。音楽図鑑は、単なるアルバムに留まらず、坂本の音楽人生における重要な作品として、多くの人々に深い感動を与えました。

このように『音楽図鑑』は、坂本龍一の独自の音楽スタイルを体現した作品であり、今なお多くのリスナーに愛され続けています。

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