BU・SU

『BU・SU』（ブス）

『BU・SU』（ブス）は、1987年に公開された日本映画で、監督は市川準、主演は富田靖子が務めました。この作品は、市川監督の映画デビュー作であり、CMクリエイターから映像作家の道を歩んだ監督が手がけたことでも注目されています。

概要

本作は、主人公である麦子という女の子が、自らの心の“ブス”を克服し成長していく過程を描いています。最初は内面的に閉じ込められた性格を持つ麦子が、やがて自立し、素直な自分を取り戻していくさまが感動的です。監督の市川準は「ブス」という言葉を容姿だけではなく、心の閉塞感を象徴するものと捉え、若者たちが抱える精神的な葛藤をこの作品に反映させました。

撮影には通常とは異なる手法が用いられ、フィルムはテスト段階から回されることもありました。通常の作品に比べて使用フィルムの長さも異例の10万フィートを超えるなど、意欲的な試みがなされたことも話題です。映画は、キネマ旬報ベスト・テン第8位に選出され、2004年にはウディネ・ファーイースト映画祭にも招待されています。

ストーリー

物語の舞台は東京の凌雲高校で、18歳の森下麦子は普通の女子高生として描かれています。しかし、彼女は複雑な家庭環境で育った結果、性格が少しひねくれた暗い女の子になってしまいました。麦子は、自分の心の“ブス”を直すため、田舎から上京し、叔母のもとで芸者見習いとして修行をしている途中です。高校進学と並行して苦闘する彼女の姿は、多くの若者が持つ心の葛藤を象徴しています。

麦子は高校で、まとまりのないクラスメイト達と共に文化祭に向けた準備に取り組むことになります。文化祭の出し物として、彼女は「八百屋お七」を舞う役を押し付けられます。この演目は、過去に芸者として活躍していた母の伝説的な踊り名でもあり、期待とプレッシャーが交錯します。

仲間たちのサポートを受けながら、麦子は少しずつ自分らしさを見つけていきます。しかし文化祭の当日、彼女の舞台の運命は予想外の展開を迎えます。手作りのやぐらが崩れ、彼女は失意の中にうずくまる場面が描かれ、そこからの再起が感動を呼びます。キャンプファイアーで心の傷を癒す素晴らしいシーンは、観る者に強いメッセージを伝えています。

キャスト

本作には多彩なキャストが揃い、富田靖子演じる麦子の成長を支える重要な役者たちも存在します。麦子の叔母である胡蝶役には大楠道代が演じ、厳しさや愛情が入り混じった関係が描かれます。また、クラスメイトの津田邦彦を演じる髙嶋政宏は、彼自身の成長も物語に絡められており、新しい出会いや別れを通じた成長が描かれています。

受賞歴

『BU・SU』は、公開当時から多くの評価を受け、文化庁優秀映画作品賞や、各映画祭での受賞歴も多い作品です。特に主演の富田靖子に対しては、主演女優賞などさまざまな賞が授与され、その演技力が高く評価されました。髙嶋政宏も新人男優賞を受賞し、これによって彼の俳優人生が大きく花開くきっかけとなりました。

小説版

脚本を元にしたノベライズも発表されており、1987年には講談社X文庫ティーンズハートから出版されました。映画とは異なる視点で描かれた主人公の物語は、さらなる深みを与えています。

まとめ

『BU・SU』は、視覚的な美しさだけでなく、心の成長を描く素晴らしい物語として今なお多くの人に愛されています。現代社会における若者の心の葛藤を代弁する意義深い作品であり、監督の市川準の意図が色濃く反映されています。

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