BioAPI

BioAPI（Biometric Application Programming Interface）とは

BioAPIは、生体認証（バイオメトリクス認証）に関わるアプリケーションの開発を容易にするための、国際標準規格のプログラミングインターフェース仕様です。異なるベンダーが生体認証システムを開発する際に、相互運用性を確保し、システム間の連携をスムーズに行うことを目的としています。

経緯

1990年代前半まで、生体認証業界は未成熟で、スタンドアローンでの運用が主流でした。そのため、APIの互換性は考慮されていませんでした。しかし、1990年代後半になると、市場の拡大とともに応用製品が増加し、異なるベンダーの製品間での相互運用性の必要性が高まりました。

この状況を受け、HA-API（Human Authentication API）やBAPI（Biometric API）といった汎用APIが登場しました。その後、アメリカ国立標準技術研究所（NIST）が支援する業界団体BioAPIコンソーシアムがこれらのAPIを統合し、BioAPIの開発を開始しました。2001年のアメリカ同時多発テロ事件を契機に、アメリカ国内でホームランドセキュリティ強化の機運が高まり、標準化作業が加速しました。

こうして開発されたBioAPI 1.1は、2002年にANSI規格（ANSI/INCITS 358-2002）として発行されました。その後、国際標準化のためISO/IEC JTC 1|ISO_IEC JTC 1/SC 37/WG 2に移管されました。当初、アメリカはBioAPI 1.1をそのまま国際標準とすることを望みましたが、最終的にはBioAPI 1.1を基盤として、仕様を全面的に再検討することになりました。その結果、2006年にBioAPI 2.0がISO/IEC規格として発行されました。

現在も、SC 37/WG 2にて仕様の改訂や関連仕様の開発が進められています。

BioAPIの各バージョン

BioAPI 1.1 (ANSI規格)

アメリカ国内のローカル規格であるANSI/NIST規格として発行されました。アプリケーション層、フレームワーク層、サービスプロバイダ層の3層構造を採用しています。BioAPI 1.1の不具合を修正したBioAPI 1.2というバージョンも存在しますが、これは正式に発行されたものではありません。

BioAPI 2.x (ISO/IEC規格)

ISO/IECによって発行された国際規格です。アプリケーション層、フレームワーク層、サービスプロバイダ層、ファンクションプロバイダ層の4層構造を採用しています。BioAPI 2.0は、BioAPI 1.1をベースに改良を重ねたもので、基本的な枠組みや主要な関数、データ構造は似ていますが、詳細部分では多くの相違点があります。そのため、ソースレベルでもバイナリレベルでも、両バージョン間での互換性はありません。

BioAPI 2.0

ISO/IEC 19784-1:2006: BioAPI Part 1: BioAPI specification（BioAPI 2.0仕様書）
ISO/IEC 19784-2:2007: BioAPI Part 2: Biometric archive function provider interface (BAFPI)（生体認証アーカイブ機能プロバイダインターフェース）。データベース管理機能を独立させたAPIです。

BioAPI 2.1

BioAPI 2.0にGUI関連の修正を加えた仕様です。

ISO/IEC 19784-1:2006/Amd 1:2007: BioGUI specification（BioGUI仕様書）

BioAPI 2.2

Framework-Free BioAPIと呼ばれるサブセット仕様で、フレームワーク層を省略し、アプリケーション層からサービスプロバイダ層を直接呼び出すことで、仕様を簡略化しています。

ISO/IEC 19784-1:2006/Amd 2:2009: Framework-free BioAPI Specification

BioAPI 2.3

ACBioなどのセキュリティ関連仕様を追加したもので、現時点では未発行です。

関連する国際標準規格

BioAPIの適合性試験

ISO/IEC 24709-1:2007: Part 1: Methods and procedures（方法及び手順）
ISO/IEC 24709-2:2007: Part 2: Test assertions for biometric service providers（生体認証サービス提供者(BSP)のための試験仕様）

CBEFF (Common Biometric Exchange Formats Framework)

生体認証に用いる様々なデータを、プラットフォームに依存せずに交換するためのデータフォーマットを定義します。CBEFFは、ヘッダー情報や枠組みのみを定義し、個々の生体特徴に固有の情報はISO/IEC 19794シリーズで定義されます。

ISO/IEC 19785-1:2006: Part 1: Data element specification（データ要素(ヘッダー情報)仕様）
ISO/IEC 19785-2:2006: Part 2: Procedures for the operation of the Biometric Registration Authority（生体認証登録当局の運用の手順）
ISO/IEC 19785-3:2007: Part 3: Patron format specifications（パトロンフォーマット仕様）

Biometric Data Interchange Formats

ISO/IEC 19794シリーズは、指紋、顔、虹彩、静脈など個々の生体特徴に固有のフォーマットを定義します。CBEFFでブラックボックスとして扱われるBDBの中身を具体的に定義します。

ISO/IEC 19794-1:2006: Part 1: Framework（第1部：フレームワーク）
ISO/IEC 19794-2:2005: Part 2: Finger minutiae data（第2部：指紋特徴データ）
ISO/IEC 19794-3:2006: Part 3: Finger pattern spectral data（第3部：指紋パターンスペクトルデータ）
ISO/IEC 19794-4:2005: Part 4: Finger image data（第4部：指紋画像データ）
ISO/IEC 19794-5:2005: Part 5: Face image data（第5部：顔画像データ）
ISO/IEC 19794-6:2005: Part 6: Iris image data（第6部：虹彩画像データ）
ISO/IEC 19794-8:2006: Part 8: Finger pattern skeletal data（第8部：指紋骨格データ）
ISO/IEC 19794-9:2007: Part 9: Vascular image data（第9部：血管(静脈) 画像データ）

外部リンク

BioAPI Consortium
IBIA(International Biometric Industry Association)