Blue Moon Rendering Tools

Blue Moon Rendering Tools (BMRT) について

Blue Moon Rendering Tools（BMRT）は、1990年代に開発された、フォトリアリスティックレンダリングシステムです。RenderMan互換でありながら、レイトレーシングなど、当時のPhotoRealistic RenderMan（PRMan）にはない独自の機能を備えていたことで知られています。フリーウェアとして配布されたため、RenderMan interfaceを学びたい学生など、多くのユーザーに利用されました。

BMRTの誕生と発展

BMRTは、ラリー・グリッツ氏がコーネル大学在学中に開発しました。1994年に最初のバージョンが公開され、その後、改良が重ねられました。その高度な機能が評価され、グリッツ氏は、PRManにBMRTの機能を組み込むためにPixarに雇われることになりました。

BMRTの採用実績としては、PixarがPRManにレイトレーシング機能を実装するまでの間、BMRTを利用していたことが知られています。また、Exluna社の情報によると、『バグズ・ライフ』、『スチュアート・リトル』、『ザ・セル』、『インビジブル』、『ウーマン・オン・トップ』といった、数々の有名な映画の3Dレンダリングにも使用されました。これらの実績から、BMRTが当時のCG制作業界に大きな影響を与えたことがわかります。

BMRTからEntropyへ、そして訴訟問題

BMRTの最終バージョン2.6は2000年11月にリリースされました。その後継として、グリッツ氏が立ち上げたExluna社によって開発されたEntropyが2001年7月にリリースされました。EntropyはBMRTをベースに、様々な機能を追加し、最適化されたRenderManレンダラでした。

しかし、2002年にNVIDIAがExlunaとEntropyを買収したことを受け、Pixarはグリッツ氏とExluna（現在のNVIDIA）を特許侵害、企業秘密の漏洩、著作権侵害で訴えました。この訴訟の結果、BMRTとEntropyの開発は停止されました。

その後、グリッツ氏とExlunaのスタッフはNVIDIAでGelatoレンダラの開発に携わることになりました。この一件は、BMRTの優れた技術と、それを取り巻く複雑な業界事情を象徴する出来事と言えるでしょう。

BMRTの功績

BMRTは、フリーソフトウェアとして、多くのクリエイターに高度なレンダリング技術へのアクセスを提供しました。また、その独自の機能は、その後のレンダリング技術の発展に大きな影響を与えました。BMRTの開発と、その後の訴訟問題は、CG業界の技術開発と知的財産権の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

脚注

外部リンク

The Demise of BMRT & entropy, from the RenderMan Repository
BMRT website, archived version through The Internet Archive

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