CANopen

CANopen：堅牢で拡張性の高い組み込みシステム用通信プロトコル

CANopenは、産業用オートメーションシステムや車載システムなど、リアルタイム性が求められる組み込みシステムにおいて、デバイス間の通信を確立するためのオープンな通信プロトコルです。Controller Area Network (CAN)をベースとしつつ、アドレッシングスキームやデバイスプロファイルといった上位層の機能を拡張することで、より複雑なシステム構築を可能にしています。OSI参照モデルのネットワーク層以上の層を実装し、デバイス間のデータ送受信を効率的に行います。

CANopenの特長

マルチマスタ対応: 複数のノードが同時にデータを送受信できるため、柔軟なシステム構成が可能です。
オープンスタンダード: 仕様が公開されており、様々なメーカーのデバイスが互換性を持って動作します。
高い信頼性: CANの堅牢な物理層と、エラー検出・訂正機能により、ノイズの多い環境でも安定した通信を実現します。ハードウェアによる再送処理により、ソフトウェアでのエラー処理を軽減できます。
拡張性: 1つのネットワークに最大127個のノードを接続でき、必要に応じてネットワークを拡張できます。
標準化されたプロファイル: 様々なデバイスの互換性を確保するために、通信プロファイル（DS-30x）が定義されています。これにより、異なるメーカーのデバイスであっても、容易に統合できます。
高速通信: 1Mbpsの通信速度を実現し、リアルタイム性が求められる用途に適しています。通信レートと配線長の組み合わせは推奨値が定められています。

CANopenのアーキテクチャ

CANopenのネットワークは、プロデューサーとコンシューマという役割を持つノードで構成されます。プロデューサーはデータを生成し送信するノード、コンシューマはデータを受信し利用するノードです。データの送受信は、PDO（Process Data Object）とSDO（Service Data Object）と呼ばれるメカニズムを用いて行われます。また、ネットワーク全体の起動や状態管理は、NMT（Network Management）サービスによって行われます。

CANopenは、物理層（CANトランシーバ）、データリンク層、ネットワーク層、そしてアプリケーション層で構成されます。データリンク層はOSIモデルの第2層に相当し、CANの物理層の上に構築されています。アプリケーション層では、デバイス固有のプロファイルが使用されます。

CANopenのプロファイル

CANopenでは、DS-301を始めとした通信プロファイルがCAN in Automationによって定義されています。これらのプロファイルは、様々なメーカーのCANコントローラやマイコン間の互換性を確保するために重要な役割を果たしています。DS-301はチップ間の差異を吸収し、標準化された通信を可能にします。さらに、DS-3xxシリーズでは、コネクタや配線といった物理的な仕様も規定されています。

CANopenの接続と起動

CANopenネットワークの起動は、マスターノードがスレーブノードからハートビート信号またはガーディング信号を受信することで行われます。これにより、各ノードの状態を監視し、ネットワーク全体の動作状態を確保します。

国際規格

CANopenは、ISOおよびIECによって標準化されており、国際的な互換性を持ちます。CAN自体も、ISO 11898, ISO 15765, ISO 11519といった国際規格で規定されています。CANopenは欧州規格EN 50325-4にも準拠しています。

CANopenの応用例

CANopenは、産業オートメーション、車載システム、医療機器など、様々な分野で広く利用されています。新幹線などの交通システムや、CERNの実験施設など、大規模なシステムにも採用されており、その信頼性と拡張性の高さが実証されています。数十万ノード規模のCANネットワークも存在し、その柔軟性とスケーラビリティを示しています。

まとめ

CANopenは、リアルタイム性、信頼性、拡張性を兼ね備えた、優れた組み込みシステム用通信プロトコルです。そのオープンスタンダード性と豊富なプロファイルにより、様々なシステムへの適用が容易で、今後も幅広い分野で活躍が期待されます。

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