COBE

宇宙背景放射探査機(COBE)の概要

宇宙背景放射探査機（COBE）は、宇宙マイクロ波背景放射（CMB）の観測を目的としてNASAによって打ち上げられた初の人工衛星です。この探査機は「Explorer 66」という別名でも知られ、宇宙の成り立ちや歴史についての理解を深めるために重要な役割を果たしました。

歴史の背景

COBEの開発は1974年に始まり、NASAが小型から中型の探査機による天文学ミッションの公募を行った際に、宇宙背景放射に関する提案が集まりました。その結果、宇宙背景放射研究の重要性が認識され、1976年に最初の提案をもとにした衛星計画が進められることとなり、1989年にこの衛星はデルタロケットによって太陽同期軌道に打ち上げられました。

COBEには3つの主要な観測装置が搭載されており、これらは以下の通りです：
1. 差分マイクロ波ラジオメータ（DMR）: CMBをマッピングし、非等方性を測定することを目的とした装置。
2. 遠赤外絶対分光測光計（FIRAS）: CMBのスペクトルを測定し、黒体放射との違いを調べる。
3. 拡散赤外背景放射実験装置（DIRBE）: 宇宙初期の赤外銀河を検出するための装置。

当初の設計はIRASからの技術を流用しており、3500万ドル以内で予算を抑えることを条件としていました。しかし、コスト削減のために開発は遅延し、1981年に始まりました。その結果、COBEは無事に1989年11月に打ち上げられました。

COBEの性能と設計

COBEの設計では、系統誤差を完全に制御し、必要なデータを得るために厳格な設計が求められました。特に、地上や他の衛星、さらには宇宙の様々な輻射の干渉を排除する必要がありました。衛星は最低でも6ヶ月間は活動することが期待され、自転軸は大気の残留物や粒子からの影響を抑えるために工夫されました。

また、COBEは太陽同期円軌道を飛行することで、全天をスキャンする能力を持ち、十分な熱安定性を維持するためのデュワーシステムを搭載していました。これにより観測装置を冷却し、正確な観測が可能となったのです。

科学的成果

COBEの観測結果は、宇宙の初期構造形成に関する重要な情報を提供しました。特に、DMRによる観測ではCMBの非等方性が発見され、これは初期宇宙に存在した密度の差異に由来するものと考えられています。このゆらぎは、現在の銀河団やボイドの形成に繋がるもので、極めて微小な温度差（約1/100,000）が確認されました。

FIRASの観測は、CMBの黒体放射曲線と理論値が完全に一致したことを示し、これにより過去に得られた不一致のデータが誤りであったことが証明されました。この結果は、ビッグバン理論を支持する重要な証拠となりました。

DIRBEによる観測も顕著であり、宇宙初期の遠赤外線銀河の発見や、惑星間塵の研究にも寄与しました。これにより、銀河系の構造や塵の特性に関する新たな情報が得られ、銀河の形成過程についての見解が進化しました。

宇宙論への影響

COBEは、多くの宇宙論的疑問にも答える手がかりを提供しました。銀河系外背景光の強度測定は、宇宙全体の星形成や重元素生成の歴史に制限を与える重要なデータを提供しました。特に、EBLの強度は約16 nW/(m²·sr)として測定され、この値は宇宙の歴史全体に影響を与えると考えられています。

また、COBEを利用することで、星形成率が予想以上に高いことが示され、将来的な観測が期待されています。これらの成果から、COBEは宇宙背景放射研究の重要な章を形成し、未来の探査機へ繋がる道を示しました。

COBEの探査機は、宇宙の成り立ちに対する私たちの理解を深め、今後さらなる研究への階段を築く重要な役割を果たしました。

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