CPD (建設)

建設業におけるCPD（Continuing Professional Development）とは

建設業界におけるCPD、すなわちContinuing Professional Developmentは、技術者が専門知識や技能を最新の状態に保ち、能力を継続的に発展させるための活動や制度全般を指します。これは、単に資格を取得した後に現状維持を図るのではなく、常に変化する技術や社会のニーズに対応できるよう、技術者自身が主体的に学習や研鑽を続けることを奨励・支援するものです。

制度導入の背景

この制度が注目されるようになった背景には、国際的な技術者資格の相互承認の動きがあります。特に1995年にアジア太平洋経済協力（APEC）内で提案された技術者資格の相互承認プロジェクトは大きな転換点となりました。このプロジェクトにより、参加国間で認定された技術者資格が、それぞれの国で同等の資格として扱われることが目指されました。

日本においては、この国際的な流れを受け、技術士法が大幅に見直されました。2000年4月26日に公布され、2001年4月1日に施行された改正技術士法では、海外の制度に比べて明確ではなかった、資格取得後の継続的な専門能力開発が法律上の努力義務として位置づけられることになりました。これにより、技術者は自らの能力向上に積極的に取り組む必要性が高まったのです。

こうした法改正や国際的な動向に応じ、国内の様々な資格認定団体や学協会が独自のCPD制度を導入し始めました。全国土木施工管理技士会連合会は、約3年間にわたる欧米の継続教育制度の研究を経て、2000年8月に「継続教育制度（CPDS）」を先行して開始しました。その後も、建設コンサルタンツ協会、日本建築家協会、日本建築構造技術者協会などが追随し、2001年以降、多くの建設関連団体がCPD制度を採用するようになりました。

CPD制度への加入者数は団体によって異なりますが、全国土木施工管理技士会連合会のように、2009年には10万人を超える規模に達した団体もあります。

また、CPD制度への参加や単位取得は、公共工事の入札において技術者の評価を高める要素ともなっています。2003年には、広島県や鳥取県が全国土木施工管理技士会が実施するCPDSの単位取得者を優遇する措置を、入札参加資格に組み込みました。国土交通省の九州地方整備局でも、2004年からCPDの履修証明提出に対して技術評価での加点試行が行われています。これ以降、多くの公共機関で、総合評価落札方式においてCPD単位の取得が評価項目として採用されるようになっていますが、具体的な評価基準は各機関によって違いが見られます。

2010年5月の事業仕分けの結果を受けて、国土交通省は同年12月に監理技術者の資格者証や講習義務を廃止し、技術者のCPD履歴を含むデータベースを整備する方針を発表しました。しかし、2015年現在、資格者証や講習義務は廃止されていません。

抱える課題

CPD制度は技術者の能力向上に寄与する一方で、いくつかの課題も指摘されています。最も大きな課題の一つは、各団体によって単位認定の基準がばらついていることです。例えば、日本技術士会では講習内容に特に制限を設けていませんが、全国土木施工管理技士会連合会では、第三者が教育内容や時間を証明できるもののみを単位認定の対象とするなど、その詳細は異なります。この基準の不統一が、技術者が複数の団体のCPDに参加する場合などに混乱を招くことがあります。

この問題を解消し、単位認定や教育形態を統一して相互に認証できるようにすることを目指し、2003年7月に建設系CPD協議会が設立されました。ICカードによるCPD登録なども検討されましたが、これらの取り組みは現在頓挫しており、基本的には各団体の独立したルールが尊重される状況が続いています。

その他にも、講習会の受講にかかる費用負担や、地方では研修機会が少なく単位を取得しにくいといった、制度を利用する上での不便さも挙げられています。一部からは、講習会を主催する団体が利益を享受するだけではないか、といった批判的な意見もあります。

単位認定の審査方式

CPD活動の単位認定には、主に以下の方式があります。

入口審査方式: プログラム実施者が事前に学協会に申請し、内容が認定されてから開催されます。受講者の単位は、受講後に自動的に登録されるか、申請に基づいて登録されます。
出口審査方式: プログラム実施者が自由に開催し、受講者が受講資料などを学協会に提出後、学協会がプログラムの内容を審査して単位を登録します。
* 混合型審査方式: 上記の入口方式と出口方式を組み合わせた方式です。

CPD制度を導入している主な団体

建設業界では、様々な分野の学協会や団体がCPD制度を導入し、技術者の継続的な能力開発を支援しています。例えば、公益社団法人全国土木施工管理技士会連合会、公益社団法人日本技術士会、公益社団法人土木学会、一般社団法人建設コンサルタンツ協会など、多くの団体が独自のプログラムや単位認定システムを運用しています。

CPD制度は、技術者個人のスキルアップだけでなく、建設業界全体の技術力向上、そして公共の安全・安心を確保する上で重要な役割を果たしています。課題も存在しますが、今後も制度の改善や普及が進むことが期待されます。

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