CRTC (LSI)

CRTC (CRTコントローラー)の概要

CRTCは、CRT Controllerの略で、コンピュータの映像出力機能を担うLSIです。ディスプレイへの映像信号生成など、出力端に近い処理を担当します。VDP、GPU、GDCといった類似のLSIもありますが、CRTCは主にラスタースキャン型ディスプレイでの文字表示制御用に発展してきました。近年では、ビットマップ表示の転送、拡大・縮小、回転、反転表示といった高度な機能も備えた機種が登場しています。

CRTCの種類と特徴

CRTCは様々なメーカーから数多くの種類が開発・製造されました。それぞれに異なる機能や性能、インターフェースを持っています。代表的な機種を以下に示します。

6845系 CRTC (モトローラ、日立)

モトローラのMC6845を始祖とするシリーズは、広く普及したCRTCです。バスタイミングや動作周波数の異なる複数機種が展開され、IBM PC/XTのモノクロディスプレイアダプターにも採用されました。主な機能は以下です。

最大256×64文字表示
1文字あたりのドット構成設定
水平/垂直同期信号制御
カーソル制御（形状、点滅）
ページング、スクロール機能
ライトペンインターフェース
* インタレース/ノンインタレース設定

カラー表示には、外部にカラーマルチプレクサやグラフィックパターンジェネレータなどを追加する必要がありました。日立製作所は、MC6845互換のHD6845シリーズを製造しており、セラミックパッケージ版とプラスチックパッケージ版が存在しました。さらに、HD6845Sシリーズでは動作周波数を向上させ、上位互換性を提供しています。HD6345, HD6445シリーズはCMOS化され、画面分割、スムーススクロールなどの機能強化が図られています。

富士通 MB89321シリーズ

富士通のMB89321シリーズは、MC6845の上位互換機種で、CMOS版です。6800系インターフェースを持ち、インタレース、ノンインタレース、ノンインタレース&ビデオ設定が可能です。4分割スクリーンの独立ページング/スクローリング、最大4画面同時スムーススクロール、外部同期、テレビ放送との重畳表示、他のCRTCとの同期化といった高度な機能を備えています。また、高速版のMB89321A、MB89321B、80系インターフェース版のMB89322シリーズも存在します。

日立 HD63484 (ACRTC)

日立のHD63484は、アドバンストCRTCとして、円やペイントなどの23種類のグラフィック描画機能、重ね合わせ表示、ズーム、スクロール機能をオンチップに搭載しています。データバス幅は8/16ビットで、68/68K系CPUで使用されました。

NEC μPD3301/7220シリーズ

NECのμPD3301はPC-8001で使用されました。μPD7220シリーズ（7220、7220A、72020、72120、72123）はGDC（Graphic Display Controller）としてPC-9800シリーズなどで使用されました。CRTCとは役割が異なるものの、PC-9801ではCRTCと混同して使われることもありました。直線や四辺形などの描画機能を持ち、データバス幅は8ビットでx86系CPUで使用されました。

リコー RP5C16/RP5C16A/RP5C16Y/RP5C56シリーズ

リコーのRP5C16/RP5C16Aは、キャラクターグラフィックスとビットマップグラフィックスの同時合成表示が可能なCRTCです。16色カラー表示に対応し、4つの表示モードを持ちます。最大320×200ドットの画面表示が可能です。仮想スクリーン機能により、スクロールによる擬似的な連続画面表示を実現します。また、文字のアトリビュート表示、スムーススクロール、クロスヘアカーソル、MASTER/SLAVEモードなどの機能を備えています。RP5C16Yは文字表示機能を削除し、ビットマップグラフィックス表示に特化した機種です。RP5C56はSDIPパッケージのCRTCです。

まとめ

CRTCは、コンピュータのディスプレイ制御において重要な役割を果たしてきたLSIです。上記以外にも多くの機種が存在し、各機種が異なる特徴を持っています。それぞれの機種が、当時のコンピュータシステムの性能や用途に合わせた設計がされていることがわかります。これらのCRTCの発展は、コンピュータのグラフィックス性能向上に大きく貢献しました。現代のGPUとは異なり、CRTCはより限定的な機能を担っていましたが、当時の技術水準では革新的なデバイスでした。

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