VDP

VDP：映像出力の進化を支えたプロセッサ

VDP（Video Display Processor）は、コンピュータシステムにおいて映像の出力処理を担うプロセッサの一種です。 テキサスインスツルメンツ社のTMS9918チップなどで広く使用された名称として知られていますが、その後、ヤマハ（V9938、V9958など）をはじめとする多くのメーカーが採用しました。 CRTC（Cathode Ray Tube Controller）、グラフィックスコントローラ、GDC（Graphics Display Controller）なども同様の機能を持つプロセッサですが、VDPはそれらと幾つかの点で明確な違いを持っています。

特に、現代のGPU（Graphics Processing Unit）とは明確に区別する必要があります。GPUは、NVIDIAがGeForce 256の発表時に提唱した概念で、当初は3Dジオメトリ処理に特化したチップでしたが、その後、プログラマブルシェーダーやGPGPU（汎用計算）機能が追加され、高度な演算能力を持つ汎用プロセッサへと進化しました。一方、VDPは、主に映像出力に特化したプロセッサであり、GPUのような高度な汎用性は持ち合わせていません。

VDPの特徴：VRAM制御と直接映像出力

VDPの大きな特徴の一つは、VRAM（ビデオメモリ）の制御方法にあります。CRTCを用いたシステムでは、CPUが直接VRAMを操作するのが一般的ですが、多くのVDPではVRAMがVDPに直結され、VDPが単独でVRAMを管理します。CPUからの操作は、VDPを介して間接的に行われます。

もう一つの重要な特徴は、直接的な映像出力能力です。TMS9918、V9938、V9958といったVDPは、RGB信号に加え、NTSC/PALコンポジット映像信号（テレビ信号）を直接出力することができました。これは、CRTCのように、外部にビデオD/Aコンバータやビデオ信号生成回路を追加する必要がないことを意味し、システム設計を簡素化しました。この直接出力機能は、特にテレビへの映像出力が必要な8bitホビーパソコンやゲーム機といった機器において大きなメリットとなりました。ただし、CRTCにおいても、リコー製RP5C16Yなど、コンポジット映像信号出力を行うものも存在します。

VDPの応用例：幅広い機器への搭載

VDPは、汎用性の高いチップであったため、様々な機器に搭載されました。具体的には、入門用8bitパソコン、同世代のゲーム機、カーナビ、ケーブル[[テレビ]]のセットトップボックス、パチンコ台、携帯電話、そして様々な映像機器などです。その汎用性と直接映像出力能力が、これらの機器の開発に大きく貢献しました。

VDPの歴史と関連技術

VDPは、コンピュータグラフィックスの進化に重要な役割を果たしました。TMS9918やその互換チップであるV9938、V9958、そしてそれらをさらに発展させたV9990など、様々なVDPチップが開発され、それぞれの時代における映像表現技術を支えました。 セガ・マークIIIやメガドライブ、セガサターンといった家庭用ゲーム機にもVDPが採用されており、これらのゲーム機のグラフィックス性能に大きく影響を与えました。

VDPは、ブラウン管（CRT）ディスプレイ、VRAM、ウィンドウアクセラレータ、グラフィックアクセラレータ、そしてスプライトなどの技術と密接に関連しています。これらの技術の進歩と共に、VDPも進化を遂げ、現代の高度なグラフィックス技術の基礎を築きました。

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