CALLISTO

CALLISTO（カリスト）

CALLISTO（カリオストロと読まれがちだが、正しくはカリスト）は、「再使用に関するランチャー技術革新のための協力行動（Cooperative Action Leading to Launcher Innovation in Stage Toss-back Operations）」の略称であり、日独仏の三か国の宇宙機関が共同で開発を進めている、単段式の再使用型ロケット実験機です。

このプロジェクトの主要な目的は、将来の再使用可能な宇宙輸送システム（RLV）の開発および運用に必要な各種技術を実証することにあります。加えて、再使用化に伴う運用コストの評価も重要な課題の一つとして取り組まれています。最初の打ち上げは、現在の計画では2026年度を目指しています。

開発に至る背景

宇宙輸送システムの再使用化は、近年の宇宙開発における重要なトレンドの一つです。日本では、宇宙航空研究開発機構（JAXA）が1998年から2007年にかけて再使用ロケット実験（RVT）に取り組み、その後も2008年から2016年まで再使用観測ロケットの技術実証を実施するなど、長年にわたり関連技術の研究を進めてきました。これらの成果は、2016年より開始された高度100メートルまでの低高度飛行実験機であるRV-Xプロジェクトへと継承されています。

一方、世界に目を向けると、米国の民間宇宙企業スペースX社が2017年3月に、ファルコン9ロケットの第1段機体を着陸させて回収・再使用することに世界で初めて成功し、再使用ロケットの実用化が現実のものとなりました。このような国内外の技術開発の進展と、再使用による宇宙輸送コスト低減への期待が高まる中で、2017年6月にはドイツ航空宇宙センター（DLR）、フランス国立宇宙研究センター（CNES）、そして日本のJAXAの三者間で協定が締結されました。この協定に基づき、共同で高度30キロメートルでの飛行実験を行うための実験機として、CALLISTOの開発が決定されたのです。

計画概要と技術的特徴

CALLISTOは、液体酸素と液体水素を推進剤とする単段式のロケット実験機です。機体の開発においては、参加する三か国の宇宙機関がそれぞれ特定のコンポーネントを担当しています。

JAXA: ロケットエンジン、機体の後部胴体、液体酸素（LOX）タンクの開発・製造を担当しています。
DLR: 機体を地上に軟着陸させるための降着装置、液体水素（LH2）タンク、機首部構造、そして飛行中の姿勢制御を行う空力舵面を担当しています。
* CNES: 打ち上げや飛行実験に必要な地上設備の整備と運用を担当しています。

打ち上げ実験は、CNESが運営する南米のギアナ宇宙センターで行われる予定です。開発自体は2020年度に始まりましたが、当初目標としていた2022年度の打ち上げからは遅延が生じており、2024年現在では2026年度内の実施を目指しています。

計画の意義と将来展望

CALLISTO計画の最大の意義は、単段式ロケットによる高度な自律誘導・制御技術や機体回収技術など、再使用型ロケットに不可欠な要素技術を、実際の飛行実験を通じて統合的に実証することにあります。また、実験を通じて得られるデータは、再使用時の機体の整備プロセスやコストに関する知見をもたらし、将来の再使用型宇宙輸送システムの実現可能性と経済性を評価する上で極めて重要な情報となります。

JAXAは、CALLISTO実験から得られる成果を基に、将来の大型ロケットにおいて第1段機体の再使用システムを導入するかどうかを具体的に検討していく考えを示しています。同様に、DLRやCNESも、欧州宇宙機関（ESA）が並行して進めている再使用実験機「Themis（テミス）」の開発成果と合わせて、欧州における再使用ロケットの開発方針を決定する上での判断材料とするとしています。JAXAにおけるCALLISTO関連の総事業費は、約34億円と見込まれています。

CALLISTOプロジェクトは、日本の宇宙開発における再使用ロケット技術の確立に向けた国際協力の象徴であり、将来のより安価で柔軟な宇宙輸送システムの実現に向けた重要なステップとして位置づけられています。

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