Century (書体)

センチュリー体：アメリカを代表する書体ファミリー

センチュリー体は、セリフ体欧文書体ファミリーとして、アメリカにおいて広く普及し、歴史的にも重要な役割を果たしてきた書体です。その起源は1894年、アメリカン・タイプ・ファウンダーズ（ATF）社のデザイナー、リン・ボイド・ベントンが『ザ・センチュリー・マガジン』誌のためにデザインしたCentury Romanに遡ります。

デザインの特徴と歴史

Century Romanは、19世紀初頭からアメリカで使われていたスコッチ・ローマン様式をベースに、当時の流行であったディドーン様式の要素も取り入れています。洗練された優雅さを持ちながら、ストロークのコントラストを低く抑えることで、高い可読性を確保している点が特徴です。細いテーパーで終わるストローク、ケルン（ボール・ターミナル）、きめ細かく尖ったセリフといったディテールにも注目です。

L・B・ベントンとその息子モリス・フラー・ベントンは、Century書体を大規模なファミリーへと発展させました。モリスはATFの買収した複数の鋳造所の書体を統合する過程で、既存のCentury Romanを改良し、Century Expandedを発表。これは大成功を収め、Centuryファミリーの礎となりました。

その後も、Century Italic、Century Boldといった様々なバリエーションが追加され、活版印刷の全盛期にはライノタイプ社やモノタイプ社など多くのメーカーがCentury体をライセンス取得またはコピーしました。

バリエーションと派生

Centuryファミリーは、Century Romanから始まり、Century Expanded、Century Italic、Century Bold、Century Bold Condensed、Century Bold Extendedなど、多くのバリエーションが開発されました。それぞれのバリエーションは、文字の太さ、幅、傾きなどを変えることで、用途に合わせて使い分けられるように設計されています。

また、Centuryファミリーのデザインは、他の書体にも大きな影響を与えました。例えば、Century Schoolbookは、教科書用にデザインされた非常に読みやすい書体として知られており、北米の多くの人々が初めて文字を学んだ書体として親しまれています。

写真植字の時代にも、Centuryファミリーは主要なメーカーによって採用され、Autologic、Berthold、Dymoなどのメーカーが独自のCentury系のフォントを開発しました。デジタル化されたCenturyフォントも数多く存在し、現代でも広く利用されています。ITC Centuryはその中でも特に人気が高く、多くのデジタルフォントに影響を与えています。

デジタル時代と現代

デジタル時代においても、Centuryファミリーは様々なデジタルフォントとして受け継がれています。その中には、オリジナルのデザインを忠実に再現したものから、現代的なデザインを取り入れたものまで、多様なバリエーションが存在します。

Microsoft製品にバンドルされているMonotype社のCenturyフォントや、オープンソースとして公開されているTeX Gyre Scholaなどは、その代表例です。さらに、Centuryファミリーのデザインを基に、新しい書体が開発されるなど、その影響力は現代においても衰えていません。

まとめ

1894年の誕生以来、活版印刷、写真植字、そしてデジタルフォントと、時代を超えて愛され続けているCentury体。その高い可読性と洗練されたデザインは、多くのデザイナーや印刷業者に支持され、アメリカを代表する書体ファミリーとして、現代においてもその存在感を示し続けています。最高裁判所が訴状にCentury体を用いることを求めるなど、その文化的・歴史的意義も無視できません。Century体の歴史を紐解くことは、アメリカの印刷技術やデザイン史を理解する上で非常に重要です。

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