Charlie Root (オペレーティングシステム)

BSD系OSの管理者ユーザー、チャーリー・ルート（Charlie Root）とは？

BSD系オペレーティングシステムにおいて、管理者権限を持つユーザーの初期設定値として知られる「Charlie Root」。その奇妙な名前の由来は、長年にわたり議論の的となっており、BSDの歴史における最大の謎の一つとされています。

Charlie Rootの基本

Unix系のOSでは、管理者権限を持つユーザーは通常「root」と呼ばれます。これは、管理者ユーザーがファイルシステムの最上位階層（ルートディレクトリ）をホームディレクトリとすることに由来します。また、Unix系のログイン情報を記録するpasswdファイルには、ユーザーID、パスワードに加えてGECOSフィールドが存在します。このフィールドは、本来GECOSシステムを制御するための情報を含むものでしたが、後にフルネームや電話番号など、人間が読むための情報を記録するために使われるようになりました。

実装

BSD系OSでは、管理者ユーザーのGECOSフィールドの初期値は「Charlie &」となっています。ここで、&はユーザーIDを意味するため、自動的に「root」に置き換えられ、結果として管理者ユーザー名は「Charlie Root」となります。FreeBSDやNetBSDの初期バージョン（バージョン1.0）のコードを確認すると、この設定が確認できます。

FreeBSD、NetBSDはともに386BSDpatchkitからの派生物であり、同様のファイルがインポートされています。各UIDのGECOSフィールドには、デニス・リッチー、ケン・トンプソン、ビル・ジョリッツ、リン・ジョリッツの名前が「名・姓」の形式で記録されており、rootが姓として扱われていることがわかります。

謎

いつから「Charlie Root」なのか？

「Charlie Root」という名前は、386BSD Patchkit以前、少なくとも4.2BSDの時代から存在していたようです。

「Charlie Root」とは誰なのか？

有力な説の一つに、1926年から1941年までメジャーリーグで活躍した野球投手、チャーリー・ルート（Charlie Root）説があります。彼は201勝を挙げた名投手でしたが、BSDが開発された1990年代には既に引退しており、また、彼が所属していたシカゴ・カブスはイリノイ州のチームであるため、カリフォルニア大学バークレー校でBSDを開発していたビル・ジョリッツが熱狂的なカブスファンであったとは考えにくいでしょう。

FreeBSDの/usr/bin/calendar/calendars/calendar.freebsdには、1993年6月19日がCharlie Rootの誕生日として登録されていますが、これはFreeBSDの名称が提案された日であり、人物としてのチャーリー・ルートとは直接の関係はありません。

なぜ姓なのか？

GECOSフィールドに&が記入された時点で、そこには姓・名を入れるルールがあったため、Charlieが追加されたと考えられます。Rootを姓に持つ人は比較的多いですが、名に持つ人は少ないため、姓として扱われたのかもしれません。1990年の米国国勢調査では、Root姓は1834位ですが、Rootを名とする人はいません。

また、BSD系OSでは、一般ユーザーが/bin/shを使うのに対し、管理者ユーザーは/bin/cshを使うように初期設定されています。「cshを利用する人たち」という意味合いで、cshの1文字目CのフォネティックコードであるCharlieを割り当て、冗談交じりに「Root一族」とした可能性も考えられます。

まとめ

BSD系OSの管理者IDが「Charlie Root」である理由は、BSDの歴史上最大の謎の一つであり、未解決の問題です。野球選手説、フォネティックコード説などが考えられますが、いずれも決定的な証拠に欠けます。正確な意味を把握するためには、今後の関係者の証言を待つ必要があるでしょう。

FreeBSD ProjectのSecurity TeamメンバーであるRemko Lodderは、「知らないよ。Kirk（マーシャル・カーク・マキュージック）が知っているんじゃない？:-)」とコメントしています。



関連項目

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