Close to 〜祈りの丘〜

『Close to 〜祈りの丘〜』と、その後の展開：記憶と愛の物語

2001年4月19日、KIDよりドリームキャスト向けに発売された恋愛アドベンチャーゲーム『Close to 〜祈りの丘〜』。交通事故によって肉体から離れた霊体となった主人公、穂村元樹が、記憶を失った恋人、柏木遊那の記憶を取り戻すために奔走する物語が展開します。

物語の概要：記憶の欠片を繋ぎ合わせて

デート中に交通事故に巻き込まれた元樹は、気が付くと幽体離脱状態に。肉体と離れてしまった彼は、自身の存在を誰も気づいてくれないまま途方に暮れます。しかし、霊能力を持つ少女たち、橘小雪と咲坂麻衣との出会いをきっかけに、元樹は「愛する人の祈りによって、肉体に戻れる」という希望を抱きます。

しかし、事故の衝撃で遊那は元樹に関する記憶を失ってしまっていました。元樹は、実体のない自分と、記憶を失った恋人との間で、どのようにして繋がりを取り戻していくのでしょうか？そして、彼の抜け殻となった肉体が完全に死を迎える前に、彼は元の体に戻る事ができるのでしょうか？

ゲームシステム：ルームパートと霊能力

本作はオーソドックスな恋愛アドベンチャーゲームの形式を取っています。主人公の選択によって、遊那、翔子、小雪、麻衣の4人のヒロインそれぞれのシナリオへと分岐していきます。特に麻衣のシナリオは、遊那のシナリオクリア後にのみプレイ可能となっています。また、翔子と小雪のシナリオには、それぞれ2つのエンディングが存在します。

本作の特徴の一つとして、「ルームパート」と呼ばれるシステムが挙げられます。これは、ヒロインの遊那の部屋に滞在している際に、部屋にある様々な物体に念を送って干渉するというものです。霊体である元樹は、このルームパートを通じて間接的に遊那の失われた記憶を呼び覚まそうと試みます。ゲームの進行に必要不可欠な要素だけでなく、遊那の意外な一面を見ることができるお遊び要素も含まれています。

PS2版では、遊那の行動やBGMなどが新規に追加され、さらにクリア後にはルームパートを無制限に鑑賞できるモードが追加されました。アイテムや遊那の行動を全て確認すると、CGを使ったショートコントも楽しめます。

多彩なヒロインたち：それぞれの想い

物語を彩るヒロインたちは、それぞれに個性的な魅力を持っています。

柏木遊那: 元樹の恋人。天然で明るく、誰にでも優しく接する性格。事故によって元樹の記憶を失ってしまっている。
汐見翔子: 元樹と遊那の親友。明るく活発な性格で、水泳部に所属している。実は元樹に想いを寄せていた過去があり、その複雑な感情も物語を彩ります。
橘小雪: 元樹の後輩。静かでクールな性格だが、霊能力を持つ。重い心臓病を抱えているという秘密も。
咲坂麻衣: 元樹の幼馴染みで、霊能力を持つ小学生。無邪気だがしっかり者で、物語の重要な鍵を握る存在。

これらのヒロインたちとの交流を通して、元樹は自身の過去や、遊那との関係性を深く見つめ直していきます。

プラットフォームと進化：ドリームキャストからPSPへ

『Close to 〜祈りの丘〜』は、ドリームキャスト版の発売後、シナリオの追加やグラフィックの全面改訂を経て、2003年にはPlayStation 2版『想いのかけら -Close to-』としてリメイクされました。PS2版には、声優陣によるラジオ風トークCDが特典として同梱されています。さらに2011年には、KIDの事業を引き継いだサイバーフロントからPlayStation Portable版が発売されました。各プラットフォームで進化を遂げ、より多くのプレイヤーに愛される作品となりました。

『Separate Hearts』との繋がり：共有された舞台

2006年に発売された『Separate Hearts』は、シナリオ上は直接的な繋がりはありませんが、『Close to 〜祈りの丘〜』と同じ舞台設定の一部を共有しています。それぞれの作品の世界観を比較検討することで、より深い理解が得られるでしょう。

まとめ：記憶と愛、そして再生の物語

『Close to 〜祈りの丘〜』は、霊能力やルームパートといった個性的な要素に加え、繊細なキャラクター描写と、記憶を取り戻すという切ないテーマによって、多くのプレイヤーを魅了する恋愛アドベンチャーゲームです。様々なプラットフォームで展開され、進化を遂げてきた本作は、今もなお多くのファンに愛され続けています。

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