Cocolonooto

沢田研二さんの音楽活動において、特別な意味を持つ作品の一つに『cocolonooto』（ココロノオト）があります。これは、沢田さんが還暦を迎えられた2008年6月25日という記念すべき日に、JULIE LABELからリリースされたアルバムです。

この作品は、単なるベストアルバムという枠を超えた、5枚組の壮大なコンセプトアルバムとなっています。収録されているのは、1995年以降に沢田さん自身が作詞を手がけた楽曲、実に69曲にも及びます。これは、彼が長年にわたり自身の言葉で歌い紡いできた世界観やメッセージを、まとめて届けようという意図が感じられる選曲です。

アルバムの大きな特徴は、その独特なアートワークと装丁にあります。アートディレクターの森本千絵氏（goen°所属）が手掛けたデザインは、通常のCDパッケージとは一線を画しています。本作は310mm×257mmという大型のCDブック形式で、全144ページというボリュームです。

このCDブック全体を通して展開されるのが、「胸に穴が空いた男」を主人公とした物語です。表紙にはその男のイラストが描かれ、驚くべきことに、その胸のあたりには実際に穴が開けられています。この視覚的な仕掛けは、アルバムの核となるコンセプト、すなわち主人公の心にぽっかりと空いてしまった喪失感や虚無感を象徴しており、音楽と物語、そしてアートが一体となった作品世界を構築しています。このコンセプトがあることで、『cocolonooto』はリスナーに音楽を聴くだけでなく、物語を読み進め、アートワークを眺めるという多角的な体験を提供します。

収録された69曲は、基本的に沢田研二さんの作詞によるものですが、中には岸部一徳さんとの共作詞曲「Long Good-by」も含まれています。編曲は多くの楽曲で白井良明氏が担当していますが、大村憲司氏や森本太郎氏、白井良明氏など、様々なアレンジャーが参加しています。また、作曲陣も多岐にわたり、沢田さん自身が作曲した楽曲も多く収録されています。これらの楽曲は、1995年以降に発表された様々なアルバムやシングルからの選曲ですが、本作のために新たにレコーディングされた「公園へ行こう」も収録されており、新鮮な驚きをもたらしています。

制作には、企画・装丁の森本千絵氏、物語の牧田智之氏、写真の杉田知洋江氏、装画の秋山花氏、文字の大塚いちお氏、美術の小林康秀氏（BEARD）など、各分野のクリエイターが参加しており、音楽作品としてだけでなく、総合的なアート作品としての完成度を高めています。沢田研二さんの還暦という人生の節目に、自身の言葉による楽曲を集め、斬新なアイデアでまとめ上げられた『cocolonooto』は、彼のアーティストとしての深みと、新たな表現への探求心を示す、記念碑的な作品と言えるでしょう。

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