Come on Stand up!

長渕剛20枚目のオリジナルアルバム『Come on Stand up!』：故郷への鎮魂と再生の物語

2007年5月16日、フォーライフミュージックエンタテイメントよりリリースされた長渕剛の20枚目のオリジナルアルバム『Come on Stand up!』。前作から約4年ぶりとなる本作は、長渕剛自身が作詞・作曲・プロデュースを手掛け、全編に渡り彼の深い想いが刻まれています。レコーディングは日本国内で行われましたが、アメリカ合衆国のレコーディングエンジニア、ブライアン・シューブルが参加したことで、サウンドに国際的な広がりを与えています。

アルバム制作の背景：喪失と故郷への回帰

このアルバムの制作には、長渕剛の父・長渕邦治氏の逝去という大きな出来事が深く関わっています。2006年4月の邦治氏の死をきっかけに、長渕剛は故郷である鹿児島に長期滞在。鹿児島各地を訪れながら、自身の心情を吐露するかのように楽曲制作に取り組みました。この経験は、アルバム全体を彩る情感豊かなメロディーと歌詞に反映されています。

アルバムリリースに至るまでの期間には、「金色のライオン」、「CLOSE YOUR EYES/YAMATO|CLOSE YOUR EYES_YAMATO」、「太陽の船」と3枚のシングルがリリースされましたが、これらの楽曲は本作には収録されず、シングル未収録アルバムとなりました。これは1983年の『HEAVY GAUGE』以来、およそ24年ぶりのことでした。

長渕剛は、アルバムリリース前後の多忙な時期にも、テレビ出演やライブツアーを精力的に行いました。バラエティ番組への出演は、長年温めていた「最後に自分が番組に出演したら面白いだろう」という彼のアイデアから実現したものでした。

音楽性：普遍的な愛と喪失の表現

音楽ライターや政治学者による評論では、このアルバムが、父親の死を乗り越え、再生しようとする長渕剛の強い意志の表れであると評されています。特に、「鶴になった父ちゃん」は、亡き父親への深い愛情と鎮魂の思いが込められた名曲として高く評価されています。

アルバム全体を通して、父への追悼、故郷への愛、普遍的な人間愛といったテーマが貫かれています。これらのテーマは、親しみやすいメロディーと、時に力強く、時に繊細な長渕剛のボーカルによって、聴く者の心に深く響きます。楽曲の一つ一つは、まるで故郷の風景を綴った詩のような、深い情感に満ち溢れています。

アルバム収録曲：多様な楽曲群

アルバムには、鹿児島中央駅を舞台にした「鹿児島中央STATION」、元プロボクサーへの応援歌「Fighting Boxer」、愛犬「レオ」をテーマにした楽曲など、バラエティに富んだ楽曲が収録されています。また、桜島オールナイトコンサート後に制作された「夕焼けの歌」も収録され、CD化を待ち望んでいた多くのファンを喜ばせました。「鶴になった父ちゃん」は、オーケストラアレンジが施され、壮大で感動的な仕上がりとなっています。

アルバム制作スタッフ

アルバムには、長年にわたり長渕剛を支えてきたミュージシャンやスタッフが参加。レコーディングエンジニアには、過去に長渕剛がアメリカで制作したアルバムにも参加したブライアン・シューブルが再び参加。日本人ミュージシャンの表記は漢字表記となり、アルバム制作へのこだわりが感じられます。

アルバムプロモーションとツアー

アルバムリリースに伴い、長渕剛は数々のテレビ番組に出演し、新曲を披露。また、「LADY’S NIGHT 2007 -Acoustic-」と題した女性客限定のツアーや、「2007 ARENA TOUR Come on Stand up!」と題した全国ツアーを開催しました。ツアーファイナルの模様はライブDVDとしてリリースされ、その内容は高く評価されています。

批評家の評価

音楽情報サイトや文芸雑誌では、本作は「人間愛」にあふれた力作であり、長渕剛の音楽性の深さを改めて示すものとして、高い評価を得ています。特に、故郷への想いや家族への愛情、そして普遍的なテーマが、真摯に表現されている点が称賛されています。

チャート成績

オリコンチャートでは最高位4位を獲得し、10.8万枚の売上を記録しました。

『Come on Stand up!』は、長渕剛の音楽人生における重要な転換期を象徴する作品であり、彼の音楽的深みと人間性を示す、まさに渾身のアルバムと言えるでしょう。

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