Computer-Mediated Communication

コンピュータ媒介コミュニケーション（Computer-Mediated Communication; CMC）は、複数の電子機器、典型的にはコンピュータを介して行われる人間同士の相互作用全般を指す概念です。日本語における定まった訳語はなく、「コンピュータを介したコミュニケーション」「コンピュータ媒介交流」「ネット上での対話」「非対面コミュニケーション」など、様々な表現が用いられています。当初は電子メールやオンラインフォーラム、インスタントメッセージといった文字による通信を指していましたが、現在ではソーシャル・ネットワーキング・サービス（SNS）や動画通話などを含む、多岐にわたるデジタルメディア上の交流の総称として広く使われています。CMCに関する研究は、これらの技術が社会や個人のコミュニケーションに与える影響を多角的に分析することに焦点を当てています。

研究領域

CMCの研究は非常に広範で、様々な学術分野からアプローチされます。社会心理学では、デジタルメディアを通じた対人関係構築や自己表現、印象形成などが探究されます。初期はオンラインとオフラインの差異が強調されましたが、現在はCMCが日常生活に組み込まれた形での分析が進んでいます。言語学では、絵文字、オンライン上での会話構造、インターネットスラングなど、CMC環境特有の言語使用が研究され、「コンピュータ媒介談話分析」と呼ばれることもあります。情報通信技術（ICT）を利用した共同作業（Computer-Supported Collaboration; CSC）の研究も、CMC研究の一部として密接に関連しています。

多様な形態

具体的なCMCの形態には、電子メール、チャット、SNS、ブログ、ビデオ通話などがあります。これらの形態は技術進歩とともに変化し続けます。

コミュニケーションの特徴と対人相互作用への影響

CMCは対人相互作用に様々な影響を与えます。特に、オンライン上での印象形成、欺瞞、集団動態、自己に関する情報の開示（開示相互主義）、対面時よりも率直になる傾向（脱阻害）、そして関係性の構築などが注目されています。他のメディアと比較した際、CMCは同時性（リアルタイムでのやり取り）と永続性（メッセージの記録可能性）において独自の性質を持ちます。例えば、インスタントメッセージは同時性が高いが永続性は低い一方、電子メールや掲示板は応答に時間がかかるため同時性は低いが永続性が高い傾向があります。一時性、マルチモーダル性、行動規範の相対的な緩やかさもCMCの特徴です。これらの特徴により、CMCは物理的・社会的な制約（地理的な距離、コミュニケーション不安など）を克服し、多様な人々の交流を可能にします。

CMCでは対面での交流と比較して、自己開示が促進される傾向があることが示されています。これは、画面越しの交流による視覚的な匿名性や、表情やジェスチャーといった非言語的な手掛かりの少なさから、他者の評価を気にせず表現しやすいためと考えられます。Waltherの超個人的コミュニケーションモデルでは、CMCが適切に用いられると、対面よりも良好なコミュニケーションや優れた第一印象につながる可能性が指摘されています。RamirezとZhangの研究も、CMCが二者間の親密さや魅力を高める可能性を示唆しています。

語学学習における利用

CMCは語学学習でも注目されており、学習者が目標言語で練習する機会を提供します。ICTが「話すこと」と「書くこと」の境界を曖昧にし、リテラシー能力を統合的に高める可能性が指摘されています。

主な利点

CMCの最大の利点の一つは、時間や場所に縛られることなく、個人が他者と容易にコミュニケーションできることです。

地理的な制約を克服し、共同作業や交流を可能にします。
コミュニケーションに困難を感じる人々の参加を支援します。
快適な場所からの交流はストレスを軽減し、自己開示を促進します。
外見に基づくステレオタイプの影響が低く、自己意識も低くなる傾向があります。
* 匿名性は関係構築を早める可能性もあります。

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