Corridor

corridor (アルバム)

『corridor』（コリドール）は、シンガーソングライター今井美樹が2009年11月25日にリリースした、キャリア18作目にあたるオリジナルアルバムです。発売元はEMIミュージック・ジャパン。

概要と特徴

前作『Milestone』から約3年ぶりの発表となった本作は、今井自身がプロデュースを手がけました。この3年間に彼女が歩んできた音楽的な道のりや活動の軌跡を凝縮した作品として位置づけられています。サウンドプロデューサーおよび編曲は、2006年のライブツアーでバンドマスターを務めた河野圭が担当し、アルバム全体の音作りを支えました。

アルバムには、過去に発表されたシングル曲が複数収められています。「祈り」、「足跡」（配信限定としてリリース）、「宝物」、「ひとひら」といった楽曲が含まれており、聴き手に馴染みのあるメロディがアルバムの核となっています。また、かつて今井のライブやツアーにコーラスやキーボードとして参加した川江美奈子の手による楽曲が多く収録されている点も特徴の一つです。川江美奈子は、今井のライブ活動を長年サポートしてきた縁深いミュージシャンであり、彼女の提供する楽曲がアルバムに彩りを加えています。

興味深い点として、このアルバムには夫である布袋寅泰が作曲またはプロデュースした楽曲が収録されていません。これは、1991年に発売されたアルバム『Lluvia』以来、実に18年ぶりのことでした。長年、夫婦として、また音楽的パートナーとしても活動を共にしてきた布袋の楽曲がないことは、本作が今井自身のセルフプロデュースによって、新たな音楽的方向性を探求した作品であることを示唆しているとも言えます。

CDの物理的なパッケージには、24ページにわたる豪華なブックレットが封入されています。これにより、視覚的な情報や歌詞、クレジットなどを楽しむことができ、アルバムの世界観をより深く味わうことができます。

主要収録曲解説

アルバム収録曲の中から、いくつかの楽曲について解説します。

宝物：アルバムに先駆けてリリースされた28枚目のシングル表題曲で、NHKの土曜ドラマ『再生の町』の主題歌として使用されました。
ひとひら：こちらも先行シングルとして発表され、TOYOTA IsisのCM「LINK-UP」のコラボレーション楽曲として知られています。
陽のあたる場所から：この曲は大同生命のCMソングとして使用され、広く聴かれる機会がありました。
足跡：配信限定シングルとしてリリースされ、テレビ東京系の人気ドラマシリーズ『水曜ミステリー9』のテーマソングに採用されました。
滴：「祈り」シングルのカップリング曲であり、アサヒビールが製造・販売する焼酎「かのか」のCMソングとして使用されました。
祈り：アルバム収録曲の中でも初期に発表されたシングルで、26枚目の表題曲です。

リメイク曲と「Brother Ship」

アルバムの収録曲には、過去の自身の楽曲をリメイクしたバージョンも含まれています。その代表的な例が「初恋のように with Brother Ship」です。この楽曲は、1988年にリリースされたアルバム『Bewith』に収録されていた曲の新たなアレンジによるものです。ここでクレジットされている「Brother Ship」とは、2008年から2010年にかけて行われた今井美樹のコンサートツアーや単独公演に帯同したバンドメンバーに付けられた愛称です。

この愛称は、「兄弟のように仲が良い」というメンバー間の良好な関係から、演歌歌手である鳥羽一郎のヒット曲「兄弟船」のタイトルをもじって考えられました。しかし、「兄弟船」という名前ではあまりにも直接的すぎると感じられたため、その意味を英語に直訳した「Brother Ship」というニックネームが付けられたというエピソードがあります。「Brother Ship」のメンバー構成は、ドラムスに鶴谷智生、ベースに松原秀樹、ギターに田中義人、キーボードに河野圭と村田昭、そしてコーラス、キーボード、グロッケン、シェイカーを担当する川江美奈子という布陣でした。ただし、「初恋のように with Brother Ship」のレコーディングにおいてはコーラスが含まれていないため、川江美奈子はこの楽曲には参加していません。

『corridor』は、今井美樹が約3年間の活動を経て、自らの手で作り上げた渾身の一枚であり、シングル曲や縁あるミュージシャンの楽曲を通して、その時期の彼女の音楽性や内面が色濃く反映された作品と言えるでしょう。

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