Crux Mathematicorum

Crux Mathematicorum（クルックス・マテマティコラム）は、カナダ数学会が発行する権威ある数学専門誌です。主に中等教育から大学の学部課程レベルの読者を対象としており、幅広い難易度の興味深い数学問題とその洗練された解答を掲載することに特化しています。その長い歴史の中で、数多くの数学愛好家や教育者、研究者から高く評価されてきました。

この雑誌のルーツは1975年に遡ります。カールトン-オタワ数学協会のもと、数学者であるLéo Sauvé氏によって「エウレカ（Eureka）」という誌名で創刊されました。しかし、イギリスのケンブリッジ大学が発行する同名の雑誌との混同を避けるため、創刊からわずか3年後の1978年、第4巻からは現在の名称である「Crux Mathematicorum」に改名されました。その後、1985年には発行元がカナダ数学会に移管され、G.W. (Bill) Sands氏が編集責任者に就任するなど、組織的な基盤が強化されました。編集責任者は時代とともに引き継がれ、L. R. Shawyer氏、Jim Totten氏、Václav (Vazz) Linek氏を経て、現在はKseniya Garaschuk氏がその任にあたっています。1997年には、同じくカナダ数学会が発行していた若年層向けの数学雑誌「Mathematical Mayhem」と統合され、その内容を一層充実させました。

Crux Mathematicorumの大きな特徴の一つは、問題解決に重きを置いている点です。著名な数学者であるロス・ホンスバーガー氏は、この雑誌について「興味深い初等的な問題においては、比類ない出版物」であると述べ、その問題選定の質の高さを称賛しています。また、ウェブサイトIMOmath.comでは、特に初期の巻（第一巻から第四巻）に掲載された不等式に関する問題を例に挙げ、「世界で至上の問題解決雑誌」とまで評するなど、国際的な評価も非常に高いものがあります。

さらに、この雑誌は日本の伝統的な幾何学問題である算額に関する連載を1984年から継続的に行っていることでも知られています。この取り組みは、国際的に見て一時忘れられかけていた算額への関心を再び高める上で重要な役割を果たしました。算額に秘められた独創的な数学的アイデアは、今日でも多くの読者を魅了しています。

近年における特筆すべき変化として、2019年1月からは、Intact Foundationの協力と支援により、Crux Mathematicorumが完全無料のオンライン出版物として提供されるようになりました。これにより、世界中のどこからでもインターネットを通じて、その豊かな数学的問題集や記事にアクセスすることが可能となり、より多くの人々が質の高い数学に触れる機会を得ています。

Crux Mathematicorumは、その長い歴史を通じて、数学教育の発展と問題解決能力の向上に貢献してきました。中等教育から学部レベルという幅広い層を対象としながらも、深い洞察と創造性を要求する問題を提供し続けることで、数学コミュニティにおいて揺るぎない地位を確立しています。無料オンライン化という時代の流れに沿った変化も経て、今後も多くの数学愛好家にとって invaluable (かけがえのない) な情報源であり続けるでしょう。

もう一度検索