Dクラッカーズ

『Dクラッカーズ』：天使と悪魔、そして心の距離

『Dクラッカーズ』は、あざの耕平が書き下ろし、村崎久都がイラストを担当したライトノベル作品です。富士見ミステリー文庫より2000年11月から2004年1月にかけて全8巻が刊行され、その後、富士見ファンタジア文庫より新装版が発売されました。 ネオ・アクション・サスペンスとして、独特の世界観と魅力的なキャラクターで人気を博した作品です。

物語の中心となるのは、通称「カプセル」と呼ばれる謎のドラッグです。カプセルには、服用すると天使や悪魔が現れ、願いを叶えてくれるという不思議な噂が流れています。7年ぶりに日本へ帰国した姫木梓は、変わり果てた幼馴染みの物部景と再会します。景はカプセルに依存しており、梓は彼の異変に衝撃を受けます。

景は、一見、無口で陰のある人物ですが、それは他人を寄せ付けないための偽りの仮面です。彼は実際には優しく、静かな性格の持ち主です。学校では「図書室の住人」と呼ばれ、やや蔑視されているものの、その実力は隠されたままです。景は、ある悪魔を探し求め、悪魔狩りを続けています。カプセルユーザーの間では、「ウィザード」の異名で知られています。


梓は、景の幼馴染みであり、「同胞」と呼べる存在です。7年間アメリカで過ごした彼女は、活発で負けず嫌いの性格をしており、護身術にも長けています。帰国後、新しい友人たちと交友を深めますが、景の身に起こった事件に関わったことで、彼らと距離を置くことになります。梓は「王国」の外の世界を憎みながらも、景のことを深く気にかけています。


物語は、カプセルの真の効力、そしてそれに隠されたキーワード「王国」「悪魔」「無慈悲な女王」といった謎を解き明かしていく過程を描いています。 梓と景は、カプセルを巡るマーケットに巻き込まれながら、互いの心の距離を縮めていきます。

主要登場人物

物部 景: 本作の主人公。無口で無愛想な性格を装っていますが、実際は優しく物静かな人物です。悪魔を操る能力を持ち、「ウィザード」と呼ばれています。強力な悪魔「影」を所有し、その実力は葛根市のアンダーグラウンドで知れ渡っています。
姫木 梓: ヒロイン。景の幼馴染みで、7年ぶりに帰国します。活発で護身術に長けており、物語に重要な役割を果たします。「女王」に関する重大な秘密を握っています。
海野 千絵: 葛根東高校実践捜査研究会会長。カプセル撲滅に情熱を燃やしています。「葛根東のミス・ホームズ」と呼ばれています。情報収集能力は高いものの、戦闘能力は低いため、常に「積極的防衛力」を必要としています。
水原 勇司: 千絵いわく「女たらしのミスター軽薄」。景の相棒であり、情報戦に長けています。かつてセルネットに所属していた経験があり、組織の内部構造に精通しています。

セルネットとその他の勢力

物語には、カプセルユーザーの組織「セルネット」や、それと敵対する組織「DD（ドラッグ・ドッグス）」が登場します。セルネットは、「女王」と呼ばれる存在を中心に、複数の細胞（セル）から構成されています。 「女王」は、すべての始まりであり、景の精神的不満を補うために「王国」を作ろうとしています。


セルネットには、執行細胞（ファーストセル）と呼ばれる3人の主要メンバーがいます。彼らは「無慈悲な女王」を召喚した存在です。 また、第二世代細胞（セカンドセル）であるIXC、第三世代細胞、第四世代細胞、第五世代細胞など、様々な勢力が複雑に絡み合っています。


DDは、甲斐氷太が率いる武闘派集団です。「狂犬の王」と呼ばれる甲斐は、圧倒的な戦闘能力を誇り、景と幾度となく対決します。

カプセルと悪魔

「カプセル」は、才能のある者が服用することで悪魔を召喚し、使役できるドラッグです。悪魔は、服用者の心の反映であり、形状や能力は多様です。悪魔の制御に失敗すると、「堕落（クラッシュ）」状態となり、危険な存在となります。

作品構成と評価

『Dクラッカーズ』は、全8巻（オリジナル版）に加え、短編集2巻が刊行されました。新装版では全7巻に再構成され、さらに新作が追加されています。 ドラマCDも発売されており、幅広いメディアミックス展開が行われています。 2005年には、『このライトノベルがすごい！』で物部景が男性キャラクター部門6位にランクインするなど、高い評価を受けています。


この作品は、ミステリアスな世界観、魅力的なキャラクター、そして緊迫感あふれる展開が特徴です。 カプセルという謎のドラッグ、そしてそれを取り巻く様々な勢力との戦いを軸に、主人公たちの成長と友情、そして葛藤が描かれています。 読者を最後まで引き込む、優れたライトノベル作品と言えるでしょう。

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