D2-VTR

D-2 VTRについて

D-2 VTRは、主に放送業務で利用されるコンポジットデジタル記録方式のビデオテープレコーダー（VTR）です。この規格は、1988年にソニーとアンペックスの共同開発によって誕生しました。日本では、日本民間放送連盟がNTSC放送に適した番組やCM素材の交換基準として採用したため、D-2 VTRは多くの放送局や映像編集スタジオで広く用いられるようになりました。

開発に先立ち、1987年にコンポーネントデジタル記録方式を採用したD-1 VTRが規格化されましたが、その高額な機器コストや、コンポーネント信号に対応するための編集設備の整備が必要であったことから、 D-1 VTRはなかなか普及しませんでした。その結果、D-2 VTRの方がコスト性能で優れていたため、特に放送局や映像編集スタジオでの利用が進みました。1990年代には映像編集専用のD-2スタジオも整備され、一層の発展を遂げました。

D-2 VTRは、映像信号の記録方式が輝度信号と色信号を合成したコンポジット映像信号であるため、デジタル放送やDVD-Videoなどの新しいメディアでの使用には制約がありました。具体的には、コンポーネント方式の信号に変換する際に、クロスカラーやドット妨害といった画質の劣化が避けられないため、次第に使用頻度が減少しました。2016年には機材のサポートが終了し、その後D-2テープメディアの販売も終了したため、D-2 VTRはその役目を終えることとなりました。既に記録されたメディアは、LTO（リニアテープオプティカル）やオプティカルディスクといった他のストレージメディアに移行されることが一般的となりました。

さらに、テレビ東京は2016年に新社屋の移転を機に、52年分の映像を整理し、一部の番組を変換せずに廃棄するという取り組みを実施しました。このように、D-2 VTRの歴史は、放送業界の技術革新の過程を振り返る上でも興味深いものです。

D-2 VTRの技術仕様

D-2 VTRは、以下の技術仕様を持っています：

• - 記録方式: ヘリカルスキャン方式
• - 記録ヘッド数: 4
• - ヘッドドラム径: 75mm
• - ヘッドドラム回転数: 89.82Hz（約5400rpm）
• - カセットテープサイズ: 254×150×33mm（Mサイズ）。他にLサイズとSサイズも存在。
• - テープ磁性体: メタルテープ（塗布型）
• - テープ幅: 19mm（3/4インチ）
• - テープ送り速度: 約131.7mm/s
• - 記録トラック幅: 39.1μm（ガードバンドなしアジマス記録）
• - 信号方式: デジタル
• - 記録速度: 総合127Mbps（映像：14.318MHz（4×fsc）8ビット非圧縮デジタル、音声：非圧縮48kHz/20ビット直線量子化×4ch）

規格名

D-2 VTRに関連する規格名には、以下のものがあります：

• - SMPTE ST 245: 記録方式
• - SMPTE ST 246: 磁気テープ規格
• - SMPTE ST 226: テープカセット規格（D-1/D-2共通）
• - SMPTE ST 247: テープへの記録フォーマット（映像データ）
• - SMPTE ST 248: 同上（タイムコード、制御、キューデータ）
• - SMPTE ST 244: パラレルインターフェース規格

このように、D-2 VTRは放送業界における重要な記録方式として長い歴史を持ちながらも、デジタル時代の中で徐々にその役割を終えつつあります。

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