アンペックス

アンペックスの歴史

アンペックス（Ampex）は、1944年にアメリカで設立された電子機器メーカーです。社名は、創業者であるアレクサンダー・M・ポニアトフ（Alexander M. Poniatoff）のイニシャル「A.M.P」と、「Excellence（卓越）」の「Ex」を組み合わせたアナグラムに由来します。当初はカリフォルニア州サン・カルロスで、わずか6人の従業員でスタートしました。

録音技術の革新

1947年、アンペックスは大きな転機を迎えます。人気歌手のビング・クロスビーが主要な投資家となり、オーディオエンジニアのジャック・マリンが開発したオープンリールテープレコーダーの商業化を支援しました。マリンが開発したテープレコーダーの原型は、クロスビーが第二次世界大戦中にドイツで入手したマグネトフォンレコーダーを改良したものでした。

当時のラジオ業界では、アメリカの東西で生じる時差が問題でした。クロスビーは自身のラジオ番組を全米で放送するために、東西両岸で二度生放送する必要がありました。彼はこの負担を軽減するため、1946年にNBCネットワークに番組の録音放送を依頼しましたが、当時のレコード録音の音質劣化を理由に拒否されました。そこで、クロスビーはマリンのテープレコーダーの可能性に着目し、テスト録音を依頼しました。テスト放送が成功すると、NBCはクロスビーの番組の録音放送を許可し、クロスビーはマリンをチーフエンジニアに任命し、アンペックスに5万ドルを投資しました。

1952年には、レスポールが開発した世界初の8トラック・テープレコーダーがアンペックスから発売され、録音技術の進歩に大きく貢献しました。

プロフェッショナル放送用機材

1956年、アンペックスは2インチテープを使用するビデオテープレコーダー「Ampex VRX-1000」を発表し、CBC（カナダ放送協会）が実用導入しました。1961年にはヘリカルスキャン方式を開発し、1963年にはビデオ編集技術「EDITEC」を発表しました。1976年には、独自の放送用1インチビデオテープレコーダー規格を発表し、後にソニーの規格と統合されました。1981年には、ビデオ特殊効果装置「ADO (Ampex Digital Optics)」を発表するなど、放送用ビデオ機材の大手メーカーとして、ソニーと並び多くのプロフェッショナル映像編集スタジオで導入されました。

テレビゲームへの関与

アンペックスは、初期のテレビゲーム事業にも深く関わっていました。アタリ社の創業者であるノーラン・ブッシュネルをはじめ、テッド・ダブニー、ダニー・ブライアン、アラン・アルコーンらは、アタリ社設立前にアンペックスに勤務し、デジタル機器の研究開発に携わっていました。彼らが使用した機器がビデオゲーム技術開発の一助となり、初期のテレビゲームの発展に貢献しました。

日本での合弁事業

1964年、アンペックスは東芝と合弁で「東芝アンペックス株式会社」を設立しました。この会社は、放送局向けの2インチVTRのライセンス生産や、学校や企業向けの統一I型VTRの生産を行いました。しかし、1982年に業績不振で解散し、労働組合との間で争議が起こりました。また、小西六写真工業（現在のコニカミノルタ）とも合弁で「小西六アンペックス」を設立し、「マグナックス (Magnax)」ブランドでオーディオ用カセットテープを製造販売しました。

その他の関連人物

アンペックスには、後に各分野で成功を収めた著名な人物が在籍していました。オラクル・コーポレーションの創業者兼CEOであるラリー・エリソンは、オラクル設立前の1970年代にアンペックスに勤務していました。また、ドルビーラボラトリーズを設立し「ドルビーサラウンド」を開発したレイ・ドルビーもアンペックスに関係していました。さらに、東芝アンペックスには福永法源が在籍していました。

外部リンク

AMPEX （英語）
アンペックスジャパンのホームページ （日本語）
* 1956: Ampex VRX-1000 - The First Commercial Videotape Recorder　（英語）

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