D6-VTR

D6-VTRは、放送業界で使用されるコンポーネント方式のデジタルビデオテープレコーダー（VTR）規格の一つです。この規格は、既存のD2-VTR規格をベースに、東芝とBTS（Broadcast Television Systems、フィリップスと放送機器メーカーの合弁会社で、後にフランスのトムソンに買収され、現在はトムソン・グラスバレーが継承）によって共同開発されました。

D6-VTRの特徴は、3/4インチのメタルカセットテープを使用している点です。このテープに、HDコンポーネント映像信号を非圧縮で記録することが可能です。具体的には、輝度信号を74.25MHzで、二つの色差信号をそれぞれ37.125MHzでサンプリングしたデータが記録されます。この高密度記録技術により、オープンリールのHDデジタル1インチVTRと比較して、より高い記録密度と低いエラーレートを実現しています。

D6-VTRは、その高度な技術と性能から、NHKや大手プロダクションなどの放送関連施設で採用されてきました。しかし、その非常に高価なシステムであるため、一般的な番組制作の現場での利用は限られています。主に、放送技術の研究開発や、3Dハイビジョン映像の記録などに利用されることが多くなっています。

東芝製のGBR-1080などのD6-VTR機器は、オプションのプロセッサーを追加することで、マルチフォーマットデコーダとしても利用可能です。これにより、様々な映像フォーマットに対応することができ、柔軟なシステム構築が可能になります。

近年では、D6-VTRは放送用途だけでなく、その大容量かつ高速なデータ転送能力を活かして、科学技術計算を行うコンピュータの記憶システムとしても注目されています。この用途では、膨大なデータを迅速に保存・読み出しする必要があるため、D6-VTRの特性が活かされています。

関連規格として、D2-VTR、D5-VTR、UNIHIなどが挙げられます。

D6-VTRの主な特徴

高画質記録: HDコンポーネント映像信号を非圧縮で記録。
高密度記録: オープンリールのHDデジタル1インチVTRと比較して、高い記録密度と低いエラーレートを実現。
多用途性: 放送用途だけでなく、科学技術計算の記憶システムとしても利用可能。
マルチフォーマット対応: オプションのプロセッサーにより、様々な映像フォーマットに対応可能。

主な用途

放送技術研究
3Dハイビジョン映像の記録
* 科学技術計算における大容量データ記録システム

D6-VTRは、その高い性能と多用途性により、特定の分野で重要な役割を果たしていますが、その高コストから一般的な利用は限られているのが現状です。

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