DECIGO

DECIGO: 宇宙重力波観測の挑戦

DECIGO（Deci-hertz Interferometer Gravitational wave Observatory）とは、日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が中心となって推進する、宇宙空間における重力波検出を目的とした大型プロジェクトです。Deci-hertz（デシヘルツ）とは、重力波の周波数帯を示し、この帯域の重力波を観測することで、これまで観測できなかった宇宙現象の解明に繋がることが期待されています。

この計画は、地上での重力波検出器とは異なるアプローチをとっています。地上では、重力波によるわずかな空間の歪みを検出するために、非常に精密な装置が必要となりますが、宇宙空間では、地球上の様々なノイズの影響を受けずに、より高感度な観測が可能になります。そのため、DECIGOは宇宙空間という極めて静かな環境を活用し、微弱な重力波を検出することを目指しています。

DECIGO計画は段階的に進められています。まず、計画の第一段階として、超小型重力波検出器SWIMμν（Swim-mu-nu）が、2009年にJAXAの小型実証衛星1号機（SDS-1）に搭載され、宇宙空間での運用試験が行われました。この試験では、宇宙環境における重力波検出技術の基礎的な検証が行われ、その成果は、将来のより高度な重力波観測衛星の開発に大きく貢献しました。

その後、地上での実験や、他の衛星への搭載などを経て、さらなる技術開発が進められています。そして、現在はJAXAの戦略的中型計画として、より高性能な重力波観測衛星「B-DECIGO」の打ち上げに向けた研究開発が精力的に行われています。B-DECIGOは、SWIMμνよりもはるかに高感度な観測能力を持つことが期待されており、ブラックホールの合体などの重力波現象をより詳細に観測することが可能になると考えられています。

DECIGO計画は、日本のみならず、国際的な協力体制のもとで進められています。例えば、欧州宇宙機関(ESA)が推進するLISA（Laser Interferometer Space Antenna）計画や、中国が計画中の天琴計画など、世界各国で宇宙重力波観測に向けた取り組みが進められており、DECIGO計画はその一翼を担っています。これらの国際的な協力を通じて、宇宙重力波観測に関する技術や知見の共有を促進し、より効率的な研究開発を進めることが期待されています。

DECIGO計画は、宇宙の進化や構造に関する謎を解き明かすための重要な鍵となることが期待されています。特に、ビッグバン直後に発生した重力波の観測は、宇宙誕生の謎に迫る上で極めて重要な情報をもたらすと考えられており、DECIGO計画は、この未解明領域への挑戦を象徴するプロジェクトです。宇宙初期の情報を捉えることで、現在の宇宙の姿を理解するための新たな知見が得られる可能性があり、宇宙物理学の発展に大きく貢献することが期待されています。また、DECIGO計画を通じて得られた技術やノウハウは、他の宇宙科学研究分野にも応用される可能性があり、日本の宇宙科学技術の進歩を牽引する役割も担っています。

関連する計画としては、LISAパスファインダー、LISA、ビッグバンオブザーバー、ビヨンド・アインシュタイン・プログラム、そして中国の天琴計画などが挙げられます。これらの計画と連携することで、より包括的な宇宙観測体制を構築し、宇宙の謎解明に近づくことが期待されます。

もう一度検索