DF-16 (ミサイル)

DF-16（東風-16）

DF-16は、中華人民共和国が開発し、中国人民解放軍ロケット軍が配備・運用する短距離弾道ミサイル（SRBM）です。北大西洋条約機構（NATO）のコードネームではCSS-11とも呼称されます。

開発と公表

本ミサイルの開発は、2000年代に中国運載火箭技術研究院によって着手されたと考えられています。その存在が初めて公に示唆されたのは、2012年9月に中国国内のインターネット上に画像が出回ったことによります。その後、2015年9月3日に北京で行われた軍事パレードにおいて、実機が公開され、その存在が公式に確認されました。

位置づけと技術的特徴

DF-16は、中国が既に配備していた短距離弾道ミサイルDF-11やDF-15の後継、あるいはこれらと中距離弾道ミサイルDF-21との間の射程の隙間を埋める目的で開発されたと分析されています。

本ミサイルの大きな特徴の一つは、その高い迎撃回避能力にあります。目標に突入する最終段階において、弾頭そのものが軌道を変更する終末機動を行うことが可能とされており、これによりアメリカのパトリオットやTHAADといったミサイル防衛システムによる迎撃を回避する能力を持つとされています。

また、DF-16は10輪式のWS2500型輸送起立発射機（TEL）を使用して運用されます。このTELシステムにより、DF-16は高い機動性を確保しており、不整地を含む様々な場所からの発射が可能となります。これは、固定された施設からの発射に比べて生存性が格段に向上し、有事における即応性や報復能力を高める上で重要な要素となります。

多様な弾頭の種類

DF-16は、500kgから最大1,000kgのペイロード容量を有しており、単一の弾頭だけでなく、最大で3基の独立目標再突入体（MIRV）を搭載することが可能です。これにより、一度の発射で複数の目標を攻撃したり、一目標に対して複数の弾頭を着弾させたりすることができます。

搭載可能な弾頭の種類も多様であり、以下のようなオプションが報告されています。

通常弾頭: 標準的な高性能爆薬を充填した弾頭で、汎用的な地上目標への攻撃に使用されます。
核弾頭: 戦略的な抑止力や、大規模な破壊を目的とした弾頭です。
バンカーバスター弾頭: 地下深くにある堅固な目標（地下掩蔽壕や指揮所など）を破壊するために設計された貫徹能力の高い弾頭です。
クラスター爆弾弾頭: 広範囲に子弾を散布し、分散した目標（滑走路、部隊集結地、車両縦列など）を効果的に攻撃するために用いられます。
* 機動再突入体（MaRV）: 終末段階で軌道を制御できる弾頭であり、前述の迎撃回避能力を実現する手段の一つです。

これらの多様な弾頭オプションにより、DF-16は様々な作戦目標に対応できる柔軟性を有しています。

運用構想と配備状況

DF-16ミサイルは、その射程と能力から、主に台湾を主要な標的として想定していると考えられています。具体的には、台湾の防空ネットワークを制圧したり、航空基地の滑走路を破壊して航空作戦能力を麻痺させたり、あるいは防御体制が不十分な指揮・統制施設などを攻撃対象とする可能性が指摘されています。

現在のところ、DF-16は主に中国南部の広東省に駐屯する中国人民解放軍ロケット軍の部隊に配備されていると報じられています。この配備状況は、台湾海峡を含む周辺地域への展開を念頭に置いたものであると見られます。

運用国

DF-16は、現時点で中華人民共和国の中国人民解放軍ロケット軍のみが運用しています。約50基が配備されていると推定されています。

本ミサイルシステムは、その高い技術的特徴と多様な能力から、地域の軍事バランスに影響を与える重要な兵器システムの一つとして認識されています。

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