MIRV

MIRV：一枚のミサイルから複数の標的を攻撃する技術

MIRV（Multiple Independently targetable Reentry Vehicle、複数個別誘導再突入体）とは、単一の弾道ミサイルから複数の弾頭をそれぞれ異なる目標に正確に誘導する技術です。この技術により、少ないミサイル発射数で広範囲の目標を攻撃できるため、核戦力の増強に大きく貢献しました。

MIRVの仕組み

MIRVミサイルは、ブーストフェイズ（ロケット推進段階）終了後に作動するポストブーストビークル（PBV）と呼ばれる小型ロケットを搭載しています。PBVは、複数の再突入体（RV）を一つずつ、微妙な速度と方向の違いを付けて放出します。この動作は、バスから乗客が降りる様子に似ていることから、PBVを「バス」と呼ぶこともあります。各RVは独立した誘導システムによって、事前に設定された異なる目標へと飛行します。

MIRVの利点と欠点

MIRVの最大の利点は、ミサイルの数を増やさずに攻撃目標数を増やせる点です。これは核戦力の抑止力強化に繋がる一方、核拡散のリスクも高める可能性があります。

しかしMIRVには欠点もあります。PBVは小型で燃料も限られているため、発射地点から大きく離れた目標、あるいは発射軌道の延長線上から大きく外れた目標を同時に攻撃することは困難です。また、複数の弾頭を正確に誘導するには高度な技術が必要となるため、弾頭のCEP（円確率偏差、目標中心からの着弾点のずれ）が大きくなり、単弾頭ミサイルに比べて命中精度が低くなる傾向があります。特に、硬化された軍事施設（ミサイルサイロなど）への攻撃には、高い命中精度が求められるため、MIRVは必ずしも有効とは言えません。

MIRVの導入国と歴史

MIRV技術には、小型で高性能な核弾頭の開発技術が不可欠です。そのため、MIRV弾道ミサイルを配備している国は限られています。現在、アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国がMIRV技術を持つ国として知られています。北朝鮮の火星17型ミサイルも、複数弾頭搭載の可能性が指摘されています。

アメリカでは、かつてICBMであるLGM-118ピースキーパーに10個の核弾頭を搭載していました。フランスは、潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）M-4でMIRV技術を採用し、6個の弾頭を搭載しています。イギリスは、アメリカから導入したトライデントII SLBMに自国の核弾頭を装備して運用していますが、PBVはアメリカ製です。中国は1970年代からMIRV技術の研究開発を進め、中距離[[弾道ミサイル]]DF-21や大陸間弾道弾DF-31AにMIRV技術を適用しています。

まとめ

MIRVは、核戦力の効率的な増強手段として重要な役割を果たしてきましたが、その技術的制約や、核拡散のリスクといった問題も存在します。今後もMIRV技術は、国際政治や軍事戦略に大きな影響を与え続けるでしょう。その発展と影響について、今後も注視していく必要があります。

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