DICOM

DICOM：医療画像の標準規格

DICOM（Digital Imaging and COmmunications in Medicine）は、医療画像機器間での画像データのやり取りを標準化する規格です。CT、MRI、CRなどの医療画像機器で撮影された画像データのフォーマットと、それらの機器間の通信プロトコルを定義しています。異なるメーカーの機器間でも画像の共有を可能にすることで、医療現場のワークフロー改善に大きく貢献しています。

DICOMの誕生と進化

DICOM規格は、米国放射線学会とアメリカ電機工業会によって制定されました。当初は、メーカー独自の規格が混在し、互換性に課題がありました。しかし、近年はDICOM規格の遵守率が高まり、医療現場での画像共有は以前よりスムーズに行えるようになっています。

画像データとしてのDICOM

DICOMは、単なる画像データフォーマットではありません。画像データだけでなく、患者の情報、撮影条件、機器情報など、様々なメタデータを含めることができます。画像データそのものは、撮影直後はRAWフォーマットで保存され、保存方法や用途に応じて、可逆圧縮フォーマット（ロスレスJPEGなど）や非可逆圧縮フォーマット（JPEGなど）が使用されます。配信時には、通信効率を上げるため、JPEG 2000などのフォーマットに変換されることもあります。

DICOMは、複数の画像を1つのファイルに格納できるマルチフレームにも対応しています。超音波診断装置などでは、画像データだけでなく、心拍音などの音声データもDICOMファイルに含めることができ、音声付き動画データとして扱うことも可能です。

通信プロトコルとしてのDICOM

DICOMは、画像データの転送だけでなく、医療機器間の通信プロトコルも定義しています。OSI参照モデルに準拠しており、様々な通信手段に対応可能です。インターネットの普及に伴い、TCP/IPを用いた通信が主流となっていますが、HTTPなどのプロトコルに比べてオーバーヘッドが大きいため、速度や効率面では劣る点が課題となっています。そのため、一部メーカーでは、自社製品間では独自プロトコルを用いるケースもあります。

DICOMのその他の仕様

DICOM規格には、画像データのフォーマットや通信プロトコル以外にも、様々な仕様が規定されています。例えば、印刷やデータ保存に関する規定、個人情報に関する情報セキュリティの仕様、DICOMフォーマットへのWebアクセスに関する規定などがあります。これらの仕様により、DICOMデータの取り扱いを統一することで、医療現場での情報共有をより安全かつ効率的に行うことができます。

DICOMを取り巻く課題

DICOM規格が広く普及している一方で、いくつかの課題も存在します。「DICOM準拠」を謳う機器であっても、メーカー間で画像フォーマットやテキストデータの扱いに違いがある「メーカー方言」が存在し、施設間の運用に影響を与えています。また、DICOM規格は人間の医療情報を対象としており、動物の医療画像などには適用できないため、獣医学分野では独自のシステムが用いられることも少なくありません。

関連技術

DICOMは、CT、MRI、CR、PETなどの医療画像機器と密接に関連しています。また、DICOMビューアと呼ばれるソフトウェアは、DICOMファイルの閲覧や管理に用いられています。さらに、Pythonのライブラリであるpydicomなども、DICOMファイルの処理を容易にするために開発されています。

まとめ

DICOMは、医療画像データの標準化に大きく貢献した規格です。しかし、メーカー方言や動物医療への適用といった課題も残されています。今後の技術革新により、これらの課題が解決され、よりスムーズな医療情報共有が実現されることが期待されます。

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