DNAマイクロアレイ

DNAマイクロアレイ（DNAチップ）とは

DNAマイクロアレイ（DNA chip）は、細胞内の遺伝子発現量を一度に測定するために開発された分析ツールです。多数のDNA断片を、プラスチックやガラスなどの基板上に高密度に配置したもので、遺伝子研究や医療分野で広く利用されています。

原理

この技術の基本的な原理は、DNAの相補的な塩基配列が互いに結合する性質を利用します。まず、塩基配列が既知の1本鎖DNA（プローブ）を基板上に固定します。次に、分析対象となる検体（ターゲット）を反応させると、検体中のDNAがプローブと相補的な配列を持つ場合に結合（ハイブリダイゼーション）します。この結合を蛍光や電流などの方法で検出し、どのDNA配列が検体に含まれているかを特定します。

DNAマイクロアレイの種類

DNAマイクロアレイには、開発主体や技術によっていくつかの種類があります。

GeneChip (アフィメトリクス社)

フォトリソグラフィー技術を用いて、基板上でオリゴヌクレオチドプローブを合成します。遺伝子特異的な配列だけでなく、ミスマッチ配列も配置することで、非特異的な結合を区別できます。

cDNAマイクロアレイ（スタンフォード型）

予め調製されたcDNA断片をスライドガラス上に配置します。2種類のサンプルを異なる蛍光色素で標識し、競合的にハイブリダイゼーションさせることで、遺伝子発現量の差を検出します。

マスクレス光合成DNAマイクロアレイ（ロシュ・ニンブルジェン）

デジタルミラーデバイスを用いて紫外線の照射を制御し、オリゴヌクレオチドを合成します。短時間で低コストにプローブアレイを作成できます。

応用分野

DNAマイクロアレイは、基礎研究から臨床応用まで幅広い分野で活用されています。

遺伝子発現解析: 細胞や組織における遺伝子の発現パターンを網羅的に解析します。
疾患研究: 疾患に関連する遺伝子や、薬剤の効果を予測するバイオマーカーの探索に利用されます。
薬物試験: 薬物の効果や副作用を遺伝子レベルで評価します。
個別化医療: 患者の遺伝子情報に基づいて、最適な治療法を選択します。
* 食品検査: 食品中の微生物や遺伝子組み換え作物の検出に利用します。

市場動向

DNAマイクロアレイの市場は、アフィメトリクス、アジレント・テクノロジー、イルミナの3社が大きなシェアを占めています。近年では、医療分野や食品検査分野での応用が拡大しており、市場の成長が期待されています。日本国内でも、東芝、パナソニック、横河電機、東レなどの企業が新規参入を準備しており、競争が激化すると予想されます。

これらの企業は、それぞれの得意分野の技術を活かして、高性能なDNAマイクロアレイの開発を進めています。例えば、電気的な検出方法や、樹脂基板の形状を工夫することで、より高感度な検出を可能にしています。

今後の展望

DNAマイクロアレイは、遺伝子研究や医療分野において重要なツールとしての地位を確立しています。今後は、より高感度で、高速、低コストなDNAマイクロアレイの開発が進み、個別化医療や食品検査などの分野での応用がさらに拡大することが期待されます。

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