DQI秘伝 竜王バリバリ隊

『DQI秘伝　竜王バリバリ隊』は、三条陸による原作と稲田浩司による漫画で描かれた、魅力的な『ドラゴンクエスト』外伝作品です。1990年12月12日と1991年6月26日に、集英社発行の『ブイジャンプ』誌上で2話掲載されました。

物語の舞台は、おなじみのアレフガルド。邪悪な竜王の魔の手によって、多くの者が苦しんでいます。その中で、ひときわ異彩を放つのが「竜王バリバリ隊」と呼ばれる5人の怪物たち。彼らはかつて人間でしたが、竜王の姉である竜貴妃によって、魔力で怪物へと姿を変えられてしまったのです。

物語は、バリバリ隊の一員であるメタルスライム、ピューが偶然にも人間の姿を取り戻すことから始まります。故郷であるドムドーラへの帰郷を図る彼らでしたが、そこはすでに暗黒竜ダースドラゴンによって壊滅していました。絶望に打ちひしがれるピューを前に、仲間たちは立ち上がります。竜貴妃の圧力に屈することなく、ピューを守るため、彼らは再び怪物として戦い、竜貴妃とその配下を撃退するのです。そして、いつの日か竜王を倒せる人間が現れることを信じて、彼らは影からアレフガルドを守る決意を固めます。

第2話では、ラダトーム城を守るバリバリ隊の姿が描かれます。しかし、スターキメラのパタタが、暗黒の騎士と竜貴妃の策略にはまり、一時的に仲間を裏切ってしまう事態に。パタタは、もとの姿に戻り、美しい女性となることを約束されますが、その裏には策略が潜んでいました。しかし、彼の優しさを見抜いたラミという女性（元は森の動物）の導きによって、パタタは仲間たちの元へ戻り、共に暗黒の騎士を倒します。この戦いの後、パタタは森の中で、ラミが元に戻った姿を見つけるのでした。

残念ながら、本作は未完に終わっています。当初は3話以上の連載が予定されていたようですが、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』のアニメ化と時期が重なったこと、『ブイジャンプ』の休刊などを理由に、物語はここで途絶えてしまいました。構想段階では、残りのバリバリ隊メンバーであるザン、ボッカ、ガオスが活躍する展開や、勇者との協力関係なども予定されていたようです。単行本化は、後に『DRAGON QUEST IV外伝 -地獄の迷宮-』に収録される形で実現しています。

本作の魅力は、数々の個性豊かなキャラクターたちにもあります。人間と怪物、善と悪、友情と裏切りなど、様々な要素が複雑に絡み合い、奥深い物語を紡いでいます。特に、竜王バリバリ隊のメンバーそれぞれが、過去に抱える苦悩や葛藤、そして仲間への強い絆を描き出されており、読者の心を揺さぶるでしょう。

ピューは泣き虫で臆病な少年ですが、仲間のために戦う勇気も持ち合わせています。パタタはわがままで気まぐれな一面を持つ一方で、根は優しく、仲間思いな一面も見せます。そして、リーダー的な存在であるザン、冷静沈着なボッカ、そしてクールなガオスといった、個性的なメンバーが織りなす物語は、まさに必見です。

敵キャラクターもまた、魅力的です。冷酷な竜貴妃、圧倒的な力を持つダースドラゴン、そして策略家の暗黒の騎士など、個性あふれる敵キャラクターたちが、バリバリ隊の前に立ちはだかります。

『DQI秘伝　竜王バリバリ隊』は、短いながらも、多くの読者に強い印象を残した作品と言えるでしょう。未完成ながらも、その世界観、キャラクター、そしてストーリーは、今もなお多くのファンに愛されています。もし、機会があれば、この忘れ去られた名作に触れてみてください。きっと、あなたもその魅力にとりこになることでしょう。

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