Debianフリーソフトウェアガイドライン

Debianフリーソフトウェアガイドライン（DFSG）とは

Debianフリーソフトウェアガイドライン（Debian Free Software Guidelines、DFSG）は、Debianプロジェクトが、どのソフトウェアライセンスがDebianの一部として含めることができる自由ソフトウェアライセンスであるかを判断するための基準となるガイドラインです。DFSGは、Debian社会契約の一部を構成しており、Debianコミュニティがソフトウェアの自由を尊重する上で重要な役割を果たしています。

DFSGの基本原則

DFSGは、ソフトウェアが自由であるための基本的な条件を定めています。主な原則は以下の通りです。

1. 自由な再頒布: ソフトウェアを自由に配布できること。
2. ソースコードの入手可能性: ソフトウェアのソースコードが容易に入手できること。
3. 改変の自由: ソフトウェアを改変したり、派生作品を作成したりする自由があること。
4. 差分の提供: 差分が提供される場合、ソースコードの同一性を要求してもよいこと。
5. 人や団体を差別しない: 特定の人や団体を差別するような制限がないこと。
6. 適用領域による差別をしない: 商用利用を禁止するなど、利用方法を制限しないこと。
7. 再配布時の追加ライセンス: ソフトウェアを再配布する際に、追加のライセンスが必要ないこと。
8. Debianに限らない: ライセンスはDebianのみに限定されるべきではないこと。
9. 他のソフトウェアを妨げない: 同梱される他のソフトウェアの利用を妨げるような制限がないこと。

GPL（GNU General Public License）、BSDライセンス、Artisticライセンスなどが、DFSGに適合する代表的なライセンスとして挙げられます。

DFSGの歴史

最初のDFSGは、1997年7月に最初のバージョンのDebian社会契約とともに発表されました。ブルース・ペレンズ氏をはじめとするDebianの開発者たちが中心となって作成しました。

1998年11月には、イアン・ジャクソン氏らが草案のバージョン1.4でいくつかの変更を提案しましたが、これは公式には採用されませんでした。ジャクソン氏は、その草案には「あいまいな言い回し」やパッチ条項に問題があったと指摘しています。

DFSGの文書自体は2007年現在まで一度も改訂されていませんが、DFSGに影響を与える社会契約の変更はありました。2004年には、Debian一般決議2004-003によって社会契約の文面が変更されました。この変更は、文面上の変更であり意味は変わらないとされましたが、結果としてリリースマネージャのアンソニー・タウンズ氏が、DFSGの適用範囲がソフトウェアに限られなくなったと解釈しました。この解釈は、開発者たちの反対により一時的に保留されました。

DFSGの適用範囲

当初、DFSGは主にソフトウェアのライセンスを評価するために使用されてきました。しかし、2004年6月、Debianプロジェクトは、ソフトウェアだけでなく、ソフトウェア文書、マルチメディアデータ、その他のコンテンツにもDFSGの原則を適用することを決定しました。これにより、Debian 4.0以降のリリースでは、ソフトウェア以外のコンテンツもDFSGに適合することが求められるようになりました。

GFDLとDFSG

GNU Free Documentation License（GFDL）の下でライセンスされている多くの文書は、不可変更部分を含んでいるため、DFSGに適合しないとされています。これは、長い議論の末、一般決議2006-001によって決定されました。GFDLの不可変更部分のために、Debianに含まれる一部のコンテンツがDFSGに完全に適合しない状況が生じています。

マルチメディアファイルの扱い

マルチメディアファイルに関しては、「ソース」とは何かという議論があります。例えば、圧縮前の画像ファイルは圧縮画像のソースなのか、3Dモデルはレンダリング結果のソースなのかなど、様々な解釈が可能です。この点については、今後も議論が続くことが予想されます。

DFSG適合テスト

debian-legalメーリングリストの参加者たちは、ライセンスがDFSGに適合するかどうかをチェックするためのテストを作成しました。詳細は、外部リンクにあるDFSG FAQ草案を参照してください。

DFSGの派生

DFSGを基に、ブルース・ペレンズ氏がDebian固有の部分を取り除いて作成したものが、オープンソースの定義（The Open Source Definition (Annotated)）です。

まとめ

DFSGは、Debianプロジェクトが自由ソフトウェアを推進するための重要な基準です。ソフトウェアだけでなく、文書やマルチメディアなど、様々なコンテンツに適用されることで、Debianコミュニティがより自由な環境を提供できるよう努めています。今後も、DFSGはDebianの発展とともに進化し続けることでしょう。

関連情報

自由ソフトウェアの定義
オープンソースの定義
自由ソフトウェアの歴史

外部リンク

Debian 社会契約とDebian フリーソフトウェアガイドライン
debian-legalメーリングリスト
DFSG FAQ草案 (英語)
Section A.1.3 of Why OSS/FS? Look at the Numbers!
現在Debianに見られるソフトウェアライセンスの一覧

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