Design Wave Magazine

Design Wave Magazine

CQ出版社から刊行されていた『Design Wave Magazine（デザイン ウェーブ マガジン）』は、組み込みシステム開発に携わる技術者を主な読者層としていた専門技術誌です。本誌は1996年に、同社の代表的な技術誌である『トランジスタ技術』の別冊として生まれました。創刊以来、組み込みシステムの設計、開発、実装に必要な幅広い情報を提供し続け、多くのエンジニアにとって重要な情報源となっていました。

カバーしていた技術分野

『Design Wave Magazine』が取り上げていた技術分野は、組み込みシステムの構築に不可欠な要素を網羅しており、その内容は極めて多岐にわたりました。システムの頭脳となるマイクロプロセッサに関する詳細なアーキテクチャ解説や最新製品情報から、その上で動作するオペレーティングシステム（OS）に関する深い議論、そしてハードウェアと密接に関わるファームウェア開発の手法まで、基礎から応用まで幅広くカバーしていました。

さらに、組み込みシステム上で動作するアプリケーションソフトウェアの開発に必要なプログラミング言語、開発ツール、効率的なデバッグ手法なども詳細に紹介されました。現代のシステムにおいてネットワーク機能は必須となっており、有線・無線を問わず、組み込み環境でのネットワーク技術の実装やプロトコルに関する解説も重要なテーマでした。これらの高度な専門情報は、複雑化・多様化する組み込みシステム開発の現場で直面する様々な課題に対する実践的な解決策や新しい視点を提供しました。

実践的な取り組みと付録

本誌の特筆すべき点の一つに、実践的な側面に力を入れていたことが挙げられます。特に2000年代には、一部の号で付録として実際に動作するマイコン基板が同梱されました。これは、読者が記事で解説されている内容を単に読むだけでなく、実際にハードウェアを手に取ってプログラムを書き込み、動作を確認することで、より深く技術を理解することを目的とした画期的な試みでした。このような付録は、特に学生やホビーエンジニアだけでなく、プロの技術者にとっても新しいマイクロコントローラーを試す手軽な機会となり、大きな反響を呼びました。実践と理論を結びつける本誌の姿勢は、多くの読者から支持されました。

休刊と後継誌

『Design Wave Magazine』は、組み込み技術の進化と普及に貢献しましたが、時代の流れと共に雑誌媒体を取り巻く環境が変化する中で、2009年3月号をもって惜しまれつつ休刊となりました。しかし、本誌が長年培ってきた組み込みシステムに関する情報提供の役割が完全に失われたわけではありません。

休刊後、本誌が担っていた主要な役割の一部は、同じくCQ出版社が発行する技術誌『インターフェース』に引き継がれることとなりました。『インターフェース』誌は、従来からソフトウェア、OS、ハードウェアインターフェース技術を中心に扱っており、Design Wave Magazineの読者層が求める情報ニーズに応える形で、組み込み関連の記事を拡充しました。

さらに、組み込み技術の中でも特に高度なデジタル回路設計などに焦点を当てた季刊誌『ディジタル・デザイン・テクノロジ』が新たに刊行され、特定分野の専門情報を深掘りする体制が整えられました。これにより、CQ出版社の組み込みシステム技術者向け情報提供ラインナップは、形を変えつつも継続されることとなりました。

CQ出版社の技術誌群における位置づけ

『Design Wave Magazine』は、CQ出版社の発行する数多くの技術専門誌の一つでした。同社の基幹誌であり、広範な電子技術を扱う『トランジスタ技術』の別冊としてスタートしたことからもわかるように、その専門性の高い方向性が特徴でした。CQ出版社は、電子工作から無線（CQ ham radio）、電源（グリーン・エレクトロニクス）、高周波回路（RFワールド）、プログラマブルデバイス（FPGAマガジン）、そして組み込みシステムなど、様々な技術分野に特化した専門誌を刊行しており、『Design Wave Magazine』もその中で組み込みシステムという重要な分野を担っていました。これらの雑誌群は、日本のエレクトロニクスおよび情報通信分野における技術情報の普及と進化に多大な貢献を果たしています。

もう一度検索